「レバレッジ効果」の落とし穴…政策金利1.0%で一変する不動産投資の勝敗ライン

「レバレッジ効果」の落とし穴…政策金利1.0%で一変する不動産投資の勝敗ライン

不動産価格はどう決まるのか

収益不動産は収益性の観点で不動産価格が決まります。

◆収益還元法という物差し

例えば、先ほどの例から引用してNOIが500万円として、投資家の求めるNOI利回りが4.0%であったとします。その場合には不動産価格は以下の通りとなります。

NOI:500万円 ÷ 4.0%(還元利回り) = 1.25億円

この還元利回りが5.0%であれば、1億円となります。

このように不動産の収益力に還元利回りで割り戻して価格を出す手法を、不動産鑑定評価においては収益還元法と言い、その結果求められる価格を収益価格と言います。

ここで難しいのが「不動産の還元利回りは、どの程度が適正なのか」という点です。

◆還元利回りの2つの求め方(比較法・積上げ法)

求めるためのアプローチの仕方としては大きく2つあります。

ひとつは「比較」によるアプローチです。同一の地域における同様の物件利回りから求めるというものです。

例えば、近くの物件が利回り4.0%で取引されているため、この物件についてもおおよそ4.0%が妥当であろうという考え方です。

もう1つは「積上げ」によるアプローチです。この場合には投資家が他の投資商品などを含めた広い観点で不動産に対する利回りを求めるというものです。

投資先は不動産のみではなく国債や社債、投資信託など利回りがあるものから検討していきます。

もっとも安全な投資先(リスクフリーレート)を、例えば10年国債の利回りとした場合、不動産の利回りは10年国債利回り+不動産リスクプレミアムとなります。

ここで言うリスクプレミアムとは不動産固有のリスクをいい、不動産の流動性の低さ(現金化に時間と費用を要する)、管理の困難さ(国債であれば手間はかからないが不動産は収入を維持するために管理が必要)、建物用途(住居系、オフィス系、ホテルなどでリスクが異なる)、不動産の立地(都心部では需要が大きく下がることはないが、地方では需要が下がる可能性がある)、建物の構造(木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造 と価値が異なる)、土地と建物のバランス(不動産鑑定評価では「最有効使用」というが、土地に相応しい建物となっているか)などを指します。

例えば、10年国債利回りが1.0%であるとして購入を検討している不動産のリスクプレミアムに4.0%求めるとすると以下の通りとなります。

10年国債利回り:1.0% + リスクプレミアム:4.0% = 5.0%

不動産の利回りが5.0%取れていれば国債に投資せずに、不動産に投資をおこなうということです。極端な例ですが、投資家が不動産のリスクプレミアムを一切考慮しないということであれば、不動産の利回りが1.0%であっても国債に投資せずに、不動産に投資することもあり得るでしょう。

ただし、投資資金がほぼ確実に償還される国債に対して、不動産は様々なリスクを抱えていることから一般的には不動産のリスクプレミアムが得られない場合には不動産投資はおこなわないとの結論になります。

10年国債利回りの推移を示すと以下の通りです。

長期にわたり低位で推移していましたが、政策金利の上昇に伴い足元では3%に近づいています。

出所:財務省 [図表13]長期金利(10年) 出所:財務省

◆なぜ利回りが下がっても不動産投資は続くのか

先ほどの例で足元のリスクフリーレートにリスクプレミアムを積み上げた利回りで検討すると以下の通りとなります。

10年国債利回り:3.0% + リスクプレミアム:4.0% = 7.0%

投資家の期待する利回りが上がるということは、投資家は安く不動産を購入しなければなりません。

それでは、10年国債利回りが上がっているから不動産価格が下がっているかと言えば現状ではそうではありません。

筆者によく送られてくる収益不動産の販売用資料を見ると「表面利回り3.5%」を謳うものが多数あります。

先述した通り表面利回りは実態との乖離が大きいため仮に不動産経費を20%とするとNOIの利回りは2.8%(3.5% ×{1 - 20%}= 2.8%)となります。

10年国債利回り3.0%に対して不動産NOI利回りが2.8%なのでリスクプレミアムはマイナスとなってしまいます。それにも関わらず当該表面利回り3.5%の物件を買うとすれば数字だけで考えれば、不動産投資の方が国債への投資より魅力的であるという考えをしていることになります。

それでは、なぜリスクプレミアムが取れないにもかかわらず不動産投資をおこなうかといえば利回りを他の周辺不動産利回りとの比較で考えている点、インフレによって不動産価格が上がるのではないかとの期待、賃料の上昇によって購入後に利回りが上がっていくとの期待、相続対策やポートフォリオの観点など利回り以外の理由などが考えられます。

また、もう1つ理由があるとすれば「不動産の遅効性」です。

不動産市場においては他の流動性の高い資産(債券や株式など)と比べて、すぐには反応がありません。

株式相場などは悪いニュースによって、すぐに反応しますが不動産では景気が悪化してきたことを認識して、いざ売却活動を開始してもすぐには現金化することができません。一方で賃料も同様です。周辺賃料が上がっていても入居者は借地借家法で守られているためすぐに賃料を上げることはできません。退去のタイミングで上げるか、更新のタイミングで交渉をおこなうかの2通りです。したがって、即座に変更することは困難です。

10年国債利回りの上昇による不動産利回りへの影響が、その遅効性によって徐々に不動産市場に波及していくという点も考慮が必要でしょう。

このように不動産投資においては他の投資商品や金利、税制改正などの影響を大きく受けるため常にアンテナを張っておくことが肝要です。

小俣 年穂
ティー・コンサル株式会社 代表取締役
不動産鑑定士
ファイナンシャル・プランニング技能士 1級
宅地建物取引士

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