
たいみち
コピー用鉛筆について更に調べてみた
前回はコピー用鉛筆の毒性について紹介したが、調べるうちに、コピー用鉛筆の歴史にも興味が湧いた。 コピー用鉛筆はいつからあった?いつまであった?そういえば、コピー用のインキのことも知らない。
今回は、コピー用インクの始まりからコピー用鉛筆の始まり、そしてその後の使われ方をたどってみた。調べていくと、思いがけない人物へつながっていて、個人的に「おお!」となる発見もあった。

コピー用インクの始まり
コピー用鉛筆の前に、コピー用インクの歴史を追ってみた。コピー用の鉛筆とインクはどちらもアニリン染料が使われていたため、インクを調べれば鉛筆の歴史にもつながるのではないかと思ったからだ。
だが、コピー用インクだけの歴史は調べられず、コピーの歴史につながった。最初のコピーの発明で使われたインクが初のコピー用インクとなる。 コピーの発明は、1780年イギリスの特許 第1244号ジェームズ・ワットによる 「書簡やその他の文書を迅速に複写する新しい方法」が世界初だ。
おお!ジェームズ・ワット?知ってるぞこの名前。そう、蒸気機関で産業革命を進めたジェームズ・ワット※1だ。意外な歴史上の人物の登場に驚いた。
調べると蒸気機関の特許が1769年、コピーの特許が1780年とある。1760年代の産業革命で増えた事務処理を効率化するために、それまでの手書きによる転写から原本を丸ごと写す方法を考案したという説もある。
ワットのコピーの方法は、書かれた原本の上に湿らせた薄い紙を押し当て、インクを紙の裏側へしみ込ませるというもの。インクが乾きすぎても、濡らしたときに流れても失敗するため、当時一般的だった没食子(もっしょくし)インク#2に砂糖やゴム糊を混ぜ、乾燥を遅らせつつ流れにくくした「コピー用インク」が作られた。
(余談だが「タンニン系インクに砂糖やゴムを混ぜると転写可能」※3となるらしい。今度やってみようと思う。)
また、複写の際に圧力をかけるための「コピープレス」も同時に発明されている。製本用プレス器に似ているが、用途に合わせて細部が異なるらしい。
なお、ジェームズ・ワットのコピーの特許は、1780年2月14日登録、No.1244(イギリス)であることはわかったが、あまりに古いことと、イギリスの特許をうまく検索できず、原本の確認はできなかった。
*コピーするときに紙に圧力をかける「コピープレス」----------------------------------------------------------------------------------------------------------
◆ちょっと余談◆
コピー用インクから、ジェームズ・ワットにつながったことに驚いたが、ワットについてもう一つ愉快に思ったことがある。
ジェームズ・ワットは「ルナ・ソサイエティ(The Lunar Society of Birmingham)という団体に所属していた。ルナ・ソサイエティは、有力な学識者、自然哲学者、事業経営者、発明家、化学者、作家らが組織した非公式の交流団体で、満月の夜に会合を開いていたことでこの名前になった。なぜ満月の夜かというと、街灯もあまりない時代に、満月の夜なら議論に花が咲いて帰りが遅くなっても明るいから、という理由らしい。
ルナ・ソサイエティには、ジェームズ・ワットはじめ、多数の学者が所属しており、関係者としてベンジャミン・フランクリンの名前もあるなど、錚々たるメンバーの団体である。その豪華な関係者の中に見覚えのある名前を見つけた。
ジョセフ・プリーストリー。
そう!消しゴムの発明者として知られているプリーストリーだ。(実際はプリーストリーが発明したのではなく、販売されているのを見つけて広めたのが正しい。本当の消しゴムの発明者は発明家のエドワード・ネアンといわれている。) なんと、コピーを発明したジェームズ・ワットと消しゴムを発見して広めたプリーストリーは、同じ交流団体に所属する仲間であった。この事実は、文房具好きとしては、なかなか興味深い。
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*JOHANN FABERのコピー鉛筆「ALLIGATOR」。芯の性質が通常の鉛筆と異なるためか、芯が縮んだようになっている。