特許の裏側:EAGLE PENCILの影
コピー用鉛筆の特許を調べていて、ふと気になったことがある。 「コピー用鉛筆についてEAGLE PENCILは関与していなかったのか。」 1900年前後のアメリカの文房具、特に鉛筆・消しゴム等の筆記具について調べていると、EAGLE PENCILの特許が関係していることが多い。そしてその特許は自社の発明ではなく、発明者から買い取っている傾向がある。コピー用鉛筆についても、EAGLE PENCILの関わりがあるのではないかと思い、ワルプスキーの特許を見直したところ、冒頭に「ジョゼフ・レッケンドルファーに譲渡」とあることに気づいた。
ジョゼフ・レッケンドルファーはEAGLE PENCILの創業時のパートナーだ。そもそもEAGLE PENCILの創業時(1856年)の社名は「ベロルツハイマー・イルフェルダー&レッケンドルファー」である。※5 つまり、ワルプスキーのコピー用鉛筆の特許も実はEAGLE PENCILに譲渡されていたというわけだ。
さらに調べると、消しゴム付き鉛筆の発明者ハイマン・リップマンの特許(1862年)を買いとったのもレッケンドルファーであった。レッケンドルファーは1875年に消しゴム付き鉛筆の件でFABER社を訴えたことでも知られ、このころの文房具史上に影響を及ぼしている人物だった。
*EAGLE PENCILのコピー用鉛筆。 
*EAGLE PENCILのコピー用鉛筆が入っていた箱のラベル。1906年の日付が印字されているが、箱の底に1918年の日付のスタンプが押されていた。
*EAGLE PENCILのコピー用芯。「PAT JUN 26 1877」とワルプスキーの特許登録日が刻まれている。今回のまとめ
コピー用鉛筆の歴史を簡単にまとめるつもりが、調べるほどに人名や特許がつながり、思いがけず複雑な道のりになってしまった。だが、散らばっていた情報が一つの線で結ばれていく過程はとても面白かった。 ここまで読んでくださった方には心から感謝したい。 いつかコピー用鉛筆に興味を持った誰かの役に立つことを願って、今回の調査をひとまずまとめとしたい。
※1:ジェームズ・ワット(James Watt) :1736年~ 1819年。ジェームズ・ワットは、18世紀に蒸気機関を大きく改良したイギリス(スコットランド)の発明家。彼の技術は産業革命を大きく進める力となり、電流の単位「W(ワット)」の由来にもなった。
※2没食子(もっしょくし)インク:没食子(もっしょくし)や五倍子(ごばいし)などの植物の瘤に含まれるタンニンと、硫酸鉄水溶液、アラビアゴムなどから作られるインクである。 また、一般的にブルーブラックインクと呼ばれているものの多くは、これらを主成分として作られている。
※3 タンニン系インクに砂糖やゴムを混ぜると転写可能:没食子酸インクなどがそれに当たる。
※4 40年代まで資料で確認:「文研社 編『筆記用品百科』(1977年発行)にも、コピー用鉛筆の説明があり、「消しゴム、インキ消しゴムなどで消すことのできない鉛筆で、大切な書類やサインなどに用いられる。その他、水に浸すと紫色に変化する黒紫コピー鉛筆もある。」と紹介されている。
※5 EAGLE PENCIL総合当時の社名:「TIMES」1932年の記事より。https://time.com/archive/6863137/business-finance-pencils/

