【連載】文房具百年 #74「コピー用鉛筆の歴史をめぐる話」

【連載】文房具百年 #74「コピー用鉛筆の歴史をめぐる話」

コピー用鉛筆の始まり


 コピー用インクの始まりは1780年頃とわかったが、これは没食子インクの改良であり、アニリン染料を使ったコピー用鉛筆には直接つながらない。
 コピー用鉛筆の始まりは、ドイツのSTABILOの1875年の特許が最初といわれている。STABILOのホームページには、1875年の特許の画像が貼られており、次の説明が書かれている。

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カラー複写ペンの発明 1875年、グスタフ・アダム・シュヴァンホイサーは、黒、赤、青のカラー複写ペンに関する特許を申請し、当時まだ紫色だった競合製品を圧倒した。こうして、オフィスワークは機能的であるだけでなく、色彩豊かなものとなったのだ。(STABILOホームページよりGoogle翻訳にて翻訳。https://www.schwan-stabilo.com/en/170-years-schwan-stabilo)
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 STABILOの発明は、当時紫色のみだったコピー用鉛筆に黒・赤・青のカラーを作り出したとあり、それは1875年にはすでに紫色のコピー用鉛筆が存在していたことを意味する。つまり、コピー用鉛筆の最初はSTABILOではないということになる。

202608taimichi4.jpg*STABILOのコピー鉛筆。



 STABILOの特許は、1875年にアメリカでも申請・登録されていた。(No.169105、1875年4月5日申請、10月26日登録)
 そこには、「コピー用鉛筆の紫以外の色を作る方法」ということは書かれておらず、コピー用鉛筆の芯として使える化合物として酸化クロム硫酸塩を使った製造方法が記載されている。ただ、最後に「私は、複写用鉛筆へのアニリンの使用について権利を主張するものではない。」という一文があり、すでにアニリン染料を使ったコピー用鉛筆が存在していたと思える節がある。それが事実だとすると、コピー用鉛筆を最初に作ったのが、どこの誰かは不明である。
 ちなみに酸化クロム硫酸塩とアニリン染料の違いは、素人には理解できないので触れずにおく。また英文をGoogleで翻訳しているので、意味の取違いの可能性もあることを、記載しておく。

  古い特許をもう一つ見ておこう。アメリカの特許でNo. 192555 、1875年3月5日申請1877年6月26日登録、チャールズ・ワルプスキーによる「COPYING-PENCIL」。こちらは、アニリン染料を使用することが明確に記載されており、この特許が、汎用的に使われるようになったコピー用鉛筆の元となったと思われる。
 なお、STABILOの特許のドイツの登録日が1875年2月14日、ワルプスキーによるアメリカでの申請が同年3月5日、その後STABILOは同月3月15日にアメリカでの特許の申請書を作成している。(申請は4月5日)
 この日程の詰まり具合は偶然かもしれないが、同時期に欧米でコピー用鉛筆について複数社が発明・販売をしていた状況にあったと想像できる。

202608taimichi5.jpg*ワルプスキーの特許申請書の画像。

その後のコピー用鉛筆


 コピー用鉛筆はいつまで使われていたのであろうか。コピー用鉛筆は、用途の変化とともに姿を消していった。しかし、国や分野によっては意外な使われ方が残っている。

・イタリアでは現在も選挙で使用
 驚いたことにイタリアでは、現在でも選挙の投票用紙への記入はコピー用鉛筆が使われている。消しにくく、たとえ消したとしても跡が残ることによる改ざん防止、裏から透けにくい、他の投票用紙に移らないといったコピー用鉛筆の特性が選挙の公正性に合致したからだ。 初使用は1946年の国民投票。現在の供給はFaber-Castellが一手に担っている。(参照:https://www.wired.it/article/matita-copiativa-voto-elezioni-2022-perche/)

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202608taimichi7.jpg*イタリアのコピー鉛筆。但し現代のものではなく、推定1930~40年代頃のもの。


・日本では昭和20〜40年代が最終期
 日本で日常的に使われていたのは、おそらく昭和20年代くらいまでであろう。コピー用としての用途はカーボン紙の登場やコピー技術の多様化によって使われなくなっていた。その後、一部の公的書類の署名など、「消しにくい」特性に合った使われ方が残ったが、最終的にボールペン移行していった。 国会図書館デジタルコレクションで過去の資料を検索すると、輸出関税関係や、郵便関係でコピー用鉛筆に関する説明などが昭和40年前後※4まで確認できる。

・医療現場での使用
 歯科や外科の医療現場でギプスや歯型を取るときの目印としても使われており、この辺りは前回の「紫鉛筆と毒の話」(https://www.buntobi.com/articles/entry/series/taimichi/022328/)で調べたことともつながる部分である。

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202608taimichi9.jpg*三菱鉛筆のコピー鉛筆。比較的後の時代のもの。推定昭和30~40年代頃。

配信元: 文具のとびら

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