ベンチや通りの花装飾

今回の滞在中、花や自然とともに印象に残ったのは、座ってくつろぎ、景色を楽しめるベンチや休憩場所が数多く設けられていたことです。スイスはこうした設備が素晴らしく、素朴な木のブロックや丸太、あるいは美しく彫刻されたベンチや椅子などの座れるスペースが、美しい景色を望む場所や木陰に多様に用意されていたほか、市役所や商店の前といった村の市場にも設置されていました。こうしたベンチなどは植物やプランターと組み合わされていることも多く、中には2つの機能を兼ね備えたものもありました。


この洗練された小さな村は、周囲の高い山々を望む高地の丘陵地に位置していて、丘を登る道、あるいは丘を下って谷へと続く道という、たった一本のメインストリートしかありません。この道にも、プランター機能を有したベンチが効果的に使われていました。

メインストリート沿いには、ステンレスの脚に支えられた木製の丸太のようなベンチが並びます。丸太の中ほどにはプランターを置くためのスペースが彫り込まれており、その左右は木材の形状を活かしたデザイン。プランターには中央に小さな木が植えられ、その両脇に赤いペラルゴニウムが添えられていました。とてもシンプルですが、素敵な佇まいです。

可愛らしいガードレールのように車道と歩道を隔てるこのベンチは、見える範囲でも20〜30基ほど設置されており、どれも手入れが行き届いていて美しい状態でした。地域のボランティアガーデナーの方々が大切に世話をしているのでしょう。中には、木製の支柱をそのまま活かし、プランターを使わず、彫り込まれたスペースに直接夏の花を植え込んでいるものもありました。

道路沿いには街路樹、多くはリンデン(西洋菩提樹)も大きく茂っていて、その根元のスペースには、小さな野原のようにさまざまな種類の野の花が咲いています。子どもや動物、あるいはうっかり植栽に踏み込みかねない人々から花々を守るために、木製の柵で囲いもつくられていました。

自然の持つシンプルな美しさ

スイス滞在中、私は自然が持つ純粋な美しさを再発見しました。色とりどりの植物を少しあしらっただけのシンプルな演出が、言葉では言い表せないほど魅力的に感じられたのです。

日常生活における自然や植物の存在は本当に素晴らしいものです。チューリッヒの市場を訪れた際にも、野の花のブーケが持つ魅力に心を奪われました。多種多様な花が並び、どのブースでも近隣地域で育てられた花々が美しくアレンジされていました。

本当に自然は素晴らしいものですね。
Credit 話・写真 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -
エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 2026年10月5日発売の書籍第3弾『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』(発行/KADOKAWA)予約受付中!
