いかにして、納得のいく「終末」を迎えるか。
それを見すえながらも、常に発展途上でいたい

痛みを伴った終戦から 80 年以上の時が流れ、戦争を体験した人々の多くが世を去りました。その声を直に聞いた世代も高齢化しつつある現在、私たちにできることはーー。作品は、確かなメッセージを伴って、見る者の胸に迫ります。
「伊藤さんという存在に出会えたこと、そして、彼の遺した『未来への遺言』をドラマ化して世に送り出そうとしたのが、まだ若い 30 代のプロデューサーであったということが、驚きかつ嬉しく、特別なことでした。俳優として、私がこの先いくつの作品に出合えるかはわかりませんが、戦争や原爆の体験は折に触れ関わっていくべきテーマなのだと、あらためて感じました」
昨年還暦を迎え、「少し早いかもしれないけれど、自分の終末を意識し、それに向かっての初期設定を考えはじめました」という本木さん。人生の完成に向けて、今から備えておくべきこととは? と尋ねると、微笑みながら、こんなふうに答えました。
「還暦とはいっても、60 年目の朝を迎えたときも、実際は、普段となにも変わらない朝だったんですよね。人生の完成といっても、多様性の時代ですから、それは人それぞれ。三種の神器じゃないけれど、『これを持っておかなきゃ』『体験しておかなきゃ』みたいなものは、もう、ありませんよね。いかに必要なものを選びぬき、自分なりに納得できるところに辿り着くかが、すべてじゃないでしょうか。もちろん、人生100 年といわれる時代ですから、私もまだまだ学びの途中だと思っていますし、常に発展途上。進化を感じ続けることが大切だと思っていますので、これからもまだ新しいものに出会いたいし、発見していくことで得られる充足感を求めていきたいと思っています」
PROFILE
本木雅弘(もとき・まさひろ)

1965 年埼玉県生まれ。’89 年、映画『226』で本格的に俳優活動を開始。’98 年公開の『シコふんじゃった。』と2008 年の『おくりびと』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、2015 年の『日本のいちばん長い日』で同・最優秀助演男優賞を受賞。『聖徳太子』『坂の上の雲』などTVドラマの大作にも多数出演。最近の出演作に映画『黒牢城』『TOUCH /タッチ』『阿修羅のごとく』(Netflix)。’26 年、還暦記念フォトブック『awai刹那と永遠のまにまに』(撮影・中村一弘、株式会社トゥーヴァージンズ)を刊行。10/28〜11/4 には東京・新国立劇場小劇場で朗読劇『たとへば君 四十年の恋歌』に出演する。

