税金を滞納すると「自己管理ウォレット」も差押え対象に…令和9年4月から変わる暗号資産の徴収ルール

税金を滞納すると「自己管理ウォレット」も差押え対象に…令和9年4月から変わる暗号資産の徴収ルール

移転命令に従わなければ刑事罰の対象に

今回の改正で特に注目されるのが、移転命令に違反した場合の罰則だ。

正当な理由なく移転命令に従わなかった場合には、刑事罰の対象となる可能性がある。

ここで注意したいのは、税務当局が秘密鍵を技術的に取得・復元し、本人の意思とは無関係に暗号資産を強制送金できるようになるわけではないということだ。

貝井税理士も、この点を強調する。

「今回の改正は、徴収職員が秘密鍵を技術的に取得・復元し、本人に代わって暗号資産を強制送金できるようにするものではありません。法律上の差押えと移転命令はできますが、本人が命令に従わなければ、預金のように第三者から直接取り立てることはできません」

つまり、今回の制度は「税務署が秘密鍵を取得して暗号資産を勝手に移動させる制度」ではない。本人などに移転を命じ、正当な理由なく従わなかった場合には刑事罰の対象となり得るという仕組みによって、差押えの実効性を高めるものだ。

また、命令違反によって刑事責任を負ったとしても、滞納している税金が消えるわけではない。

「移転命令に違反して処罰を受けても、滞納税額が免除されるわけではありません」(貝井税理士)

一方で、本人が刑事責任を負うことも覚悟して命令を拒み、ほかに差し押さえられる財産もない場合には、実際の回収が困難となる可能性は残る。そのため、今回の改正を「自己管理ウォレットの暗号資産を必ず回収できる制度」と捉えるのは正確ではない。刑事罰を背景として移転を促し、差押えの実効性を高める制度と理解するのが適切だろう。

暗号資産投資家にとって何が変わるのか

では、税金をきちんと申告・納付している一般の暗号資産投資家に、今回の改正が直接影響するのだろうか。

今回取り上げている徴収手続の改正によって、一般の投資家の税額の計算方法や申告方法が直接変わるわけではない。

貝井税理士は、一般の投資家への影響についてこう説明する。

「今回取り上げている徴収手続の改正によって、税額の計算方法や申告方法が直接変わるわけではありません。また、暗号資産を保有しているという理由だけで差押えの対象になるものでもありません」

問題になるのは、税金を滞納し、滞納処分を受ける場面だろう。

預金などの財産から滞納税額を回収できれば、それで徴収が完了するケースもある。一方、ほかの財産だけでは滞納額に足りず、自己管理ウォレットに暗号資産を保有している場合には、その暗号資産も徴収対象となり得る。

なお、預金を必ず先に差し押さえ、暗号資産を最後に差し押さえるという法的な優先順位が定められているわけではない。

一般の投資家にとって重要なのは、「自己管理ウォレットに移せば税務当局から見えなくなる」「実際の徴収までは及ばない」という考え方が、これまで以上に通用しにくくなることだろう。

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