マネーロンダリングとは?企業が知っておくべき7つのこと

マネーロンダリングとは?企業が知っておくべき7つのこと

3、マネーロンダリングで注意が必要な「犯罪収益」と「前提犯罪」

マネーロンダリングに関連する法律や政府のガイドライン等を調べていると、「犯罪収益」「前提犯罪」という言葉がよく出てきます。

これらの言葉の意味を、正確に確認しておきましょう。

(1)犯罪収益とは

既にご説明したように、マネーロンダリングとは、「犯罪収益」を洗浄する行為を規制するものです。

犯罪収益とは、その名のとおり、犯罪によって得られる経済的利益のことです。

ただ、マネーロンダリングで規制の対象となる「犯罪収益」は、あらゆる犯罪を対象とするものではなく、一定の「前提犯罪」に限られています。

したがって、何が犯罪収益に当たるかを知るためには、前提犯罪の種類を知っておく必要があります。

(2)前提犯罪とは

マネーロンダリングの規制の対象となる「前提犯罪」は、極めて多岐にわたりますが、ひとことで言うと、不法な収益を生み出す犯罪ということができます。

具体的には、組織的犯罪処罰法の別表と麻薬特例法に掲げられていますが、その数は刑法犯とその他の特別法犯を併せて200以上にのぼります。

実際に検挙されることが多い罪名でいうと、

  • 窃盗罪
  • 詐欺罪
  • 出資法違反
  • 貸金業法違反
  • 売春防止法違反
  • わいせつ図画頒布等罪

などが挙げられます。

企業の経済活動に関連する犯罪としては、法人税法をはじめとする

  • 各種税法違反
  • 背任罪
  • 横領罪

などに、特に注意すべきでしょう。

ただ、反社会勢力と関わると、多岐にわたる犯罪による収益を受け取ってしまうおそれもあります。

したがって、企業がマネーロンダリング対策を検討する際には、前提犯罪かどうかを問わず、不法な収益ではないかと疑われる金品は受け取らないという姿勢が必要になると考えられます。

4、マネーロンダリングについて、企業が知っておくべき法律等

マネーロンダリングの規制に関する法律等は非常に数多くありますが、企業が最低限知っておくべきものとして、以下の3つが挙げられます。

(1)組織的犯罪処罰法

組織犯罪処罰法(正式名称は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」)は、組織ぐるみで行われた犯罪を重く処罰することで、国民の平穏で健全な社会生活を守るための法律です。

また、犯罪収益が組織的犯行を助長したり、事業活動への不当な干渉によって、経済活動に重大な悪影響を及ぼすことから、

  • 犯罪収益の隠匿
  • 収受
  • 犯罪収益を使って法人等の事業経営の支配を目的とする行為

などの処罰も定められています。

さらには、犯罪収益にかかる財産の没収や追徴に関する特例等も規定されています。

企業としては、たとえ商品やサービス代金としてであっても、相手方から差し出される金銭が犯罪収益であることを知りながら受け取ると同法違反となりますので、注意が必要です。

(2)犯罪収益移転防止法

犯罪収益移転防止法(正式名称は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」)は、特に、犯罪収益が組織的な犯罪を助長するために使用されたり、事業活動に使われることによって、健全な経済活動に重大な悪影響を与えることを重視して、特定事業者に対して、取引時の

  • 本人特定事項の確認
  • 取引記録等の保存
  • 疑わしい取引の届出

などの義務を定めた法律です。

この法律で規制の対象とされる「特定事業者」は多岐にわたりますが、主な業種は以下のとおりです。

  • 銀行をはじめとする金融機関等
  • 貸金業者
  • ファイナンスリース事業者
  • クレジットカード事業者
  • 保険会社
  • 暗号資産交換業者
  • 商品先物取引業者
  • カジノ事業者
  • 宅地建物取引業者
  • 宝石・貴金属等取扱事業者
  • 郵便物受取サービス事業者
  • 電話受付代行業者
  • 電話転送サービス事業者
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 公認会計士
  • 税理士

まだ他にもありますので、より詳しくは同法第2条2項でご確認ください。

自社が特定事業者に該当する場合は、顧客との取引時に、本人特定事項を確認することや、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出などを徹底しなければ、マネーロンダリングに巻き込まれてしまうおそれがあります。

特定事業者に該当しない企業でも、金融機関からの確認に対して、適切に応じなかったり、反社会的勢力との取引があるような場合には、金融機関から取引を停止されてしまうことがあります。

そうなると、資金面の問題や風評被害などによって、事業の継続に支障をきたすおそれがあるので注意が必要です。

(3)マネロンガイドライン

マネロンガイドライン(正式名称は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン)は、金融庁から2018年2月に公表されました。

その後、金融機関等へのモニタリングを通じて判明した事情を踏まえて、より実効的な体制整備を徹底するため、2021年2月に改正されました。

本ガイドラインでは、「リスクベース・アプローチ」という手法が採用されています。

リスクベース・アプローチとは、リスクを特定・評価した上で、そのリスクの高低に見合った対策を講じることをいいます。

具体的には、金融機関等が、

  • 自社の商品やサービス
  • 取引形態
  • 取引先の国や地域
  • 顧客の属性

などのリスクを検証し、マネロン・テロ資金供与のリスクを「特定」します。

そして、当該リスクの自社への影響度等を「評価」します。

このようにして、特定・評価されたリスクを前提として、金融機関等は、以下のようなリスク低減措置を講じるべきこととされています。

  1. 顧客の属性や取引内容等を調査し、講じるべき低減措置を判断・実行すること
  2. 取引そのものに注目し、異常取引等を検知すること
  3. 顧客管理の状況や結果等の記録を保存すること
  4. 疑わしい取引があった場合は、行政庁に届け出ること
  5. データを適切に管理し、ITシステムを有効に活用すること

マネロンガイドラインの基本的な内容を知っておくことは、金融機関以外の企業にとっても大切です。

なぜなら、金融機関から「疑わしい」と判断されると、取引を停止されるおそれがあるからです。

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