養育費を払わない率は75%?支払義務や未払い時の罰則などを弁護士が解説

養育費を払わない率は75%?支払義務や未払い時の罰則などを弁護士が解説

そもそも養育費の支払は「義務」

養育費の支払いは、離婚に伴って夫婦間で取り決めることが一般的です。
しかし、そもそも養育費は、親権を持った親から強く請求されなかったからといって、支払わなくて良いような性質のものではありません。

養育費は、子の親として、子に対する生活保持義務として支払うべきものです。
夫婦が離婚をしても、子は引き続き父母の子であることには変わりはなく、親権を持たなかったからといって親としての責務を放棄することは許されません。

このように、養育費の支払いは本来、親としての義務なのです。

いくら支払う?

養育費の額は、法律で明確な金額が決められているわけではありません。
そのため、まずは夫婦間で話し合って金額を決めることとなります。

夫婦間で合意ができるのであれば、いくらであっても構いません。
相場としては、家庭裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」が参考となるでしょう。

夫婦間で話し合いがまとまらず裁判となった場合には、この算定表の金額あたりに落ち着くことが多いためです。

贈与税がかかる場合もある

本来、養育費には贈与税はかかりません。
ただし、養育費を子の養育のため以外に使用したと税務当局に判断された場合には、例外的に贈与税の対象となる場合があるため注意が必要です。

具体的には、名目は養育費であったとしても、そのお金でマンションや土地を購入した場合などが挙げられます。
また、養育費を一括で受け取り、これを預金したり株式投資の元手にしたりした場合にも贈与税の対象となるリスクがあります。

養育費を受け取る際は、子の養育に充てる資金であることを十分に理解したうえで、他の資産とは分けて管理をしておくと良いでしょう。

いつまで支払う?

養育費の支払い義務は、子が成人するまでが原則です。
子が複数いる場合には、それぞれの子について、その子が成人するまでの間支払い義務があります。

ただし、夫婦間の話し合いで、これとは異なる取り決めをしても構いません。
たとえば、「大学を卒業する月まで」などと定めることも多く、そのように取り決めた場合には、実際に大学を卒業するまでの間、支払い義務が継続されます。

時効について

当初取り決めた養育費を相手が支払わない場合、本来の支払い時期から時間が経つと時効にかかってしまいます。

養育費の消滅時効は、原則として5年です。
ただし、調停や審判において養育費が確定した場合、すでに発生していた過去の分の養育費については、消滅時効は5年ではなく10年に伸長されます。

養育費の支払いは義務であるものの、不払いの状態が長期にわたると、時効によりもはや請求ができなくなってしまうため注意が必要です。

また、時効完成前であっても、あまりに長期間不払いの状態が続けば、相手方に請求をしたとしても不払い分をまとめて支払えるだけの資力がなく、結局は取りそこねてしまう可能性が高まります。

養育費の支払いが滞った際には、早い段階で弁護士へ相談し、早期の解決を図ることが重要です。

改正民事執行法で変わったこと

2020年4月1日、改正民事執行法が施行されました。

民事執行法では、養育費の支払いが滞った際に強制執行をする準備段階の手続きとして、「財産開示手続」を定めています。
これは、裁判所が養育費の支払い義務者に対して、保有する財産の状況を報告させる手続きです。

しかし、従来は養育費の支払い義務者が財産開示手続に協力しなくても30万円以下の過料というペナルティしか適用できず、いわゆる逃げ得を許してしまっていた状況があります。

2020年の改正により、この「財産開示手続」に応じなかったり、嘘の回答をしたりした場合には、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されることとなりました。

これにより、養育費の支払いを逃れたり養育費を不当に減額させたりしようと、嘘の報告をしたり財産開示手続に応じなかったりする「逃げ得」を封じる効果が期待できます。

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