いち早く避難するためのポイント
津波からの避難は、いち早く行うことが重要です。
今後、高い確率でおきるとされる南海トラフ地震について内閣府が行った被害想定では、昼間に津波がおきた場合の最大の死亡者数は約11万2千人、深夜では約16万人とされています。
しかし、いち早い避難が行われた場合には、
地震がおきてから
70%の人が「昼間の場合5分後、深夜の場合10分後」に避難を開始
30%の人が「昼間の場合15分後、深夜の場合20分後」避難を開始
した場合には、昼間では57%減、深夜では41%減。
地震がおきてから
全員が「昼間の場合5分後、深夜の場合10分後」に避難を開始
した場合には、昼間では76%減、深夜では56%減。
となり、大幅に死者数を減らせると想定されています。
一方で大津波警報・津波警報・津波注意報は地震が発生してから3分(一部の地震は2分)を目標に発表されることになっています。十分な避難時間を確保するためにも、警報や注意報の発表前でもゆれを感じたら、事前に調べておいた津波避難場所や津波タワーに避難をしましょう。
避難に必要なものを探して逃げ遅れることがないように、玄関や自室の取り出しやすい場所に非常用持ち出し袋を用意し、貴重品なども1か所にまとめておきましょう。押入れの奥などの取り出しにくい場所にしまうと、逃げ遅れたり、扉がゆがんで取り出せなくなったりするため注意が必要です。
また、避難時は下記のポイントを守って避難をすることが大切です。
たくさんの人が一斉に車を使うと渋滞がおきて逃げ遅れることがあるため、避難は原則徒歩で行うこと。(歩行が困難な要支援者がいるなどの場合は除く)
川沿いは津波が遡上するため、川から離れて避難を行うこと。
一度避難をおこなったら、警戒や注意報が解除されるまで絶対に戻らないこと。
想定にとらわれない避難
大きな地震があったときには、想定にとらわれずにより高い避難場所を目指すことも必要です。
東日本大震災では釜石の奇跡と呼ばれる、多くの命を助けた例があります。
地震がおきたとき、岩手県の釜石東中学校の生徒たちは「津波がくるぞ!逃げろ!」と大声で叫びながら避難を始めました。その様子を見た隣接する小学校の先生と生徒が後に続き、近所の住民もつられて避難を始めました。
いつもの避難訓練で指定されている避難場所にたどり着きましたが、そこから見えた津波の大きさに危険を感じた中学生が声を上げ、さらに高い高台へ逃げることになります。
高台への避難が終わると目前まで津波がせまり、始めに避難をした避難場所には3mもの津波が押し寄せたそうです。
東日本大震災では、想定されていなかった場所にまで津波が届きました。「一番近い避難場所まで来たから大丈夫」という想定にとらわれず、より高い場所へ避難を行うことが命を救う分岐点になりました。
また、他の人が避難をしている様子を見ると、避難をするつもりが無かった人もつられて避難するようになります。大きな声を出すことで周りに避難の必要性が伝わったことが、より多くの人を救うことになりました。
今まで何回も避難したけれども、一度も津波は来なかったから今回も大丈夫。という思い込みも捨てる必要があります。避難をしても津波が来ないときに「空振りだ(無駄だった)」と思うのではなく、本当に地震が来たときのための「素振りだ(練習だ)」と考えるようにしましょう。
「避難しなくても大丈夫」と思い込んでしまう、正常性バイアスについてはこちらのページで紹介していますので、参考にしてみてください。
正常性バイアスとは?災害時に「自分は大丈夫」と考える落とし穴。事例を知って対策しよう
次回は、東日本大震災でおきた津波被害とともに、「南海トラフ地震」や「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」といった今後起きるとされている大きな地震で予測されている津波の大きさや被害状況について紹介します。
参考資料
総務省消防庁 東日本大震災記録集
3.1 被害の概要/3.2 人的被害の状況
平成22年 国土交通白書
第一部 第1章 第1節
八重山地方防災連絡会
津波防災マニュアル
津波の高さと被害状況
国土交通省 四国地方整備局 那賀川河川事務所
地震津波対策 津波について
内閣府 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ
南海トラフ巨大地震の被害想定について(再計算)~建物被害・人的被害~
配信: moshimo ストック