仕事を掛け持ちしている場合、社会保険の加入はどうなるの?

給与所得者の人は、毎月の給与から各種社会保険料が差し引かれています。これは一定以上の規模がある事業者は、従業員に社会保険を適用する義務があるからです。
 
働き方改革により副業している人が増えた現代において、仕事を掛け持ちした場合に社会保険の加入や保険料の支払いはどうなるのか、疑問をもつ人もいるかもしれません。本記事では、複数の仕事をしている場合の社会保険について解説します。

社会保険とは

社会保険といわれて思い浮かぶのは、健康保険や厚生年金保険でしょう。しかし、一般的に社会保険は5つあるといわれています。

 

また、個人事業主などが加入する国民健康保険の保険料は全額個人負担ですが、会社員など給与所得者の社会保険料は勤務先も保険料を負担しています。まずは、このような社会保険の種類や仕組みについて解説します。

 

社会保険は事業所単位での適用

社会保険とは公的な強制保険ともよばれていて、国や公的機関が保険者、会社員や公務員が被保険者の保険制度です。強制保険とよばれている理由は、一定以上の従業員がいる事業所は法律によって加入が義務付けられているからです。

 

以下の条件に該当する事業所は「強制適用事業所」とよばれ、保険加入が義務付けられます。

 

(1)以下の事業を行う事業所(常時5人以上の従業員を雇用)

 

・製造業

・土木建築業

・鉱業

・電気ガス事業

・運送業

・清掃業

・物品販売業

・金融保険業

・保管賃貸業

・媒介周旋業

・集金案内広告業

・教育研究調査業

・医療保健業

・通信報道業

・士業

 

(2)国または法人の事業所

 

常時、従業員を使用する国、地方公共団体または法人の事業所

 

社会保険の種類

社会保険にも種類があり、広い意味では5つ、狭い意味でも3つが社会保険とよばれています。

 

・健康保険

・介護保険

・厚生年金保険

・労災保険

・雇用保険

 

健康保険・介護保険・厚生年金保険は狭義の社会保険で、広義では労働保険とよばれている労災保険・雇用保険が加わります。

 

狭義の社会保険のなかでも介護保険は40歳からの加入なので、若い人は社会保険といえば健康保険と厚生年金保険をイメージする人が多いかもしれません。

 

保険料は企業も負担する

社会保険は強制加入なので保険料の支払いも強制となります。しかし、加入は事業所単位なので保険料は事業所にも負担があります。

 

具体的な負担割合は以下のとおりです。

 

・健康保険料:2分の1ずつの折半

・介護保険料:2分の1ずつの折半(40~64歳)、全額自己負担(65歳~)

・厚生年金保険料:2分の1ずつの折半

・労災保険料:全額事業主負担

・雇用保険料:2分の1ずつの折半

 

複数の会社に勤務している場合の社会保険加入

社会保険への加入は一定以上の規模の勤務先で働く場合は強制となりますが、複数の勤務先で働く場合はどうなるのでしょうか。どちらの勤務先に加入するのか、どちらにも加入するのかといった疑問も浮かびます。また、保険料の支払いはどのようになるのかという疑問を覚えるかもしれません。

 

まずは、社会保険の加入要件を踏まえたうえで、複数勤務での社会保険に関して解説します。

 

社会保険の加入要件

上述のとおり、社会保険は常時5名以上の従業員がいる事業所、国や法人事業所に加入義務があります。また加入対象となる人は短時間労働者を含めて以下のとおりです。

 

・常時雇用されている

・1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上

・従業員101人以上の会社(2024年10月からは51人以上)に勤務していて、週の所定労働時間20時間以上、月収8万8000円以上、2ヶ月を超えて雇用される見込み、学生以外

 

2つの勤務先で要件を満たすかどうか

社会保険は複数の会社に勤務していても加入するかどうかは、加入要件を満たしているかどうかで決まります。つまりどちらも加入条件を満たしている事業所に勤務していれば、双方の勤務先で社会保険に加入する義務があります。

 

社会保険料は報酬額によって決定するので、それぞれの勤務先の報酬額に応じた保険料をそれぞれ支払います。複数の会社に勤務した場合は、自分で届け出をする必要があります。条件を満たして10日以内に年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出しましょう。

 

なお、健康保険証などの発行は1枚だけとなるので、自分で選択した勤務先のものが発行されます。

 

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