年金は、額面どおりの金額を受け取れるわけではありません。実際に口座に振り込まれるのは、税金や社会保険料などが差し引かれた金額です。年金受給者の親がいる場合「振込額が少ない」といった相談を受けることもあるでしょう。
その際に、適切な回答ができるように、年金からどんなお金がどのような条件にて控除されるのか理解しておくことをおすすめします。そこで本記事では、年金から控除される税金や社会保険料について解説します。
ねんきん定期便に記載された額と実際の年金額は異なる
日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」に記載された将来もらえる年金額と、実際に受け取れる年金額は異なる点に注意しましょう。ねんきん定期便は、図表1のように年齢区分に応じて送付形式や記載内容が異なります。
【図表1】
年齢区分 | 送付形式 | 通知内容 |
---|---|---|
50歳未満(35歳と45歳以外) | はがき | ・保険料納付額
・年金加入期間 ・直近13月の月別状況 ・これまでの加入実績に応じた年金額 |
35歳と45歳 | 封書 | ・保険料納付額
・年金加入期間 ・年金加入履歴 ・全期間の月別状況 ・これまでの加入実績に応じた年金額 |
50歳以上(59歳以外) | はがき | ・保険料納付額
・年金加入期間 ・直近13月の月別状況 ・年金の種類と見込額 |
59歳 | 封書 | ・保険料納付額
・年金加入期間 ・年金加入履歴 ・全期間の月別状況 ・年金の種類と見込額 |
出典:国民年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」
ねんきん定期便は、作成時点における情報から年金見込額を計算しますが、その金額で支給されるわけではありません。総支給額とねんきん定期便に記載されていた年金額に違いがなかったとしても、税金や社会保険料が差し引かれるため「実際よりももらえる年金が少ない」ということになります。
年金から控除される税金や社会保険料とは?
公的年金のうち障害年金と遺族年金は非課税ですが、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、一定の金額以上受け取ると税金や社会保険料が控除されます。年金から控除される税金と社会保険料の種類は以下のとおりです。
【税金】
●所得税
●住民税
【社会保険料】
●国民健康保険料
●後期高齢者医療保険料
●介護保険料
年金から控除される税金と社会保険料について、詳しく解説します。
所得税と住民税
老齢基礎年金と老齢厚生年金の所得の種類は雑所得となり、一定の条件に該当すると所得税と住民税の課税対象です。必ず所得税や住民税が課税されるわけではなく、年金収入から各種控除(公的年金等控除や基礎控除など)を差し引いた金額に対して課税されます。
65歳未満の年金受給者で年金収入が108万円以下なら、公的年金控除額(60万円)と基礎控除額(48万円)を合算すると108万円となるため非課税扱いです。また、65歳以上の年金受給者で年金収入が158万円以下なら、公的年金控除額(110万円)と基礎控除額(48万円)を合算すると158万円となって非課税扱いになります。
基礎控除額や公的年金控除額以外にも、社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除があるので、それらの控除を受けられれば年金収入が高くても課税対象になりません。
介護保険料
介護保険料は、老齢基礎年金や老齢厚生年金から控除される社会保険料の一つです。65歳以上、かつ以下の条件の両方に該当する人が控除対象となります。
●老齢基礎年金、障害年金、死亡を事由とする年金などを受給している
●年間の年金支給額が18万円以上
控除される介護保険料は、所得を10段階に分けて計算(5段階の人を基準額とし、基準額×0.3〜基準額×1.8にて計算)します。
国民健康保険料または後期高齢者医療保険料
以下のすべての要件に該当する場合、国民健康保険料または後期高齢者医療保険料も年金から控除されます。
【国民健康保険料】
●65歳以上75歳未満の人
●老齢基礎年金、障害年金、死亡を事由とする年金などを受給している
●年間の年金支給額が18万円以上
【後期高齢者医療保険料】
●75歳以上もしくは65歳以上75歳未満で、後期高齢者医療保険制度に該当する人
●老齢基礎年金、障害年金、死亡を事由とする年金などを受給している
●年間の年金支給額が18万円以上
配信: ファイナンシャルフィールド