専業主婦は保険料を払わず「2400万円」の年金を受け取れてズルい? 家事や育児は「仕事」にカウントされないの?

政府は社会保険の適用範囲の拡大を行っており、2024年10月にはさらに多くのパート従業員が社会保険の対象になります。そんな政府の方向性の中、ネット上では「第3号被保険者をなくせばよいのに」という言葉を目にします。第3号被保険者制度がなくなればその分、社会保障費が浮くからです。
 
本記事では、第3号被保険者制度の仕組みと、専業主婦(夫)や扶養内で働くパートが得られる年金受給額について解説します。

第3号被保険者とは

日本では、国内に在住する20歳から60歳までのすべての人が国民年金へ加入しなければなりません。そして国民年金へ加入している人(被保険者)は図表1のように、第1号から第3号までの3つの種別にわけられています。

 

図表1

 

 

政府広報オンライン 会社員などの配偶者に扶養されている方、扶養されていた方(主婦・主夫)へ 知っておきたい「年金」の手続

 

第3号被保険者とは、会社員や公務員などの第2号被保険者に扶養されている配偶者のことをいい、専業主婦(夫)や年収130万円未満(従業員数101人以上の会社で働いている場合は年収106万円未満)で働いている人が該当します。

 

第3号被保険者の特徴は、自身での年金保険料の負担なしに将来の年金を受け取れる点です。年金保険料は扶養している配偶者が負担しているわけではなく、第2号被保険者全体で負担している仕組みとなっているのです。なお、第1号被保険者に扶養されている配偶者については自身で年金保険料を納める必要があります。

 

「第3号被保険者をなくせばよいのに」と言われる理由はこのような仕組みにあると考えられます。

 

専業主婦が受け取る30年分の年金受給額と40年分の年金保険料

それでは第3号被保険者の年金受給額と、制度によって負担しなかった年金保険料を計算してみたいと思います。20歳で専業主婦となり、95歳で死亡した場合で計算してみましょう。年金受給額や年金保険料は2023年4月分からの金額が計算期間中、続くものとします。

 

【年金受給額】

老齢基礎年金は原則として65歳から受給できるので、95歳までの30年間受給しています。

 

6万6250円×12ヶ月×30年=2385万円

 

【年金保険料】

20歳で第3号被保険者になったことによって60歳までの40年間、自身での年金保険料の負担はありません。

 

1万6520円×12ヶ月×40年=792万9600円

 

つまり、本来であれば年金保険料約800万円を納付して、約2400万円の年金を受給していたところを、第3号被保険者の場合だと負担額0円で約2400万円を受け取ることになります。30歳で第3号被保険者になったとしても、30年分の保険料約600万円の納付が不要になるため、第三者から見ると非常に大きい負担だと感じても不思議ではありません。

 

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