「固定残業制の会社はやめておけ」友人が熱弁するのですが、理由は何でしょうか?

見かけは給与が高くても、年収は低い場合がある

固定残業制が導入されていると、基本給は低く、月給から想定できるほど年収は高くならないので、入社後に「だまされた」と思ってしまう可能性があります。

 

例えば、月給30万円のうち、5万円が固定残業代だとしましょう。そして、賞与は年間2ヶ月分とします。

通常は月給30万円であれば、賞与が60万円となり、年収は420万円となります。しかし、固定残業代5万円が含まれていると、賞与は固定残業代を除いた25万円を基に計算されます。それゆえ、年収は350万円となります。これは固定残業代の額が高ければ高いほど、賞与の基準となる月数が多ければ多いほど、如実に年収の差となって現れます。

また、同様に残業代の単価も、基本給を基準にして計算されます。そのため、1時間残業をした場合、月給30万円の方と比較して、固定残業代5万円込みで30万円の方は、1時間当たりの残業代も低くなります。

 

制度が適正に運用されていない場合もある

そもそもですが、固定残業制をめぐって、裁判が頻繁に起こってるという実態もあります。中には、最高裁判所にまで持ちこまれた争いもあります。

「労働時間の研究―個人調査結果の分析」によれば、固定残業制の下で働いている方は、回答をした労働者のうち28%ほどいると推定されます。その「固定残業制の下で働いている方」を対象に「固定残業代に相当する時間数を知っているか」という回答を集計したところ、「知らない」との回答が78.8%を占めました。

 

固定残業制を導入する場合、それに相当する時間数や月給のうち何円が固定残業代であるか、明示する必要があります。また、そもそも残業代や休日出勤手当が支払われていない方も、回答をした労働者のうち10.1%存在しています。

これまで見た調査結果を確認する限り、固定残業制の運用において、条件が明示されていない、超過分の残業代が支給されないなど、適正でない運用がなされている職場は少なくないでしょう。そのため、「固定残業制は悪だ」といわれてしまうことがあるのです。

 

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