「転移性肝臓がんの進行速度」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

「転移性肝臓がんの進行速度」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

肝臓がんの治療方法

肝臓がんに対する治療は手術や薬物などさまざまな方法があります。進行度や性質・患者さんの体調に応じて適切な方法が選ばれます。個別に詳しくみていきましょう。

肝切除術

肝切除術はがん細胞とその周囲を切り取る外科手術です。がんを物理的に切除するので、根治効果が期待できます。この方法が選ばれるのは、がんが3個以内で転移がなく、悪性度が中または低レベルで肝機能に余裕がある場合です。
がんがある場所や数によっては負担の少ない腹腔鏡手術ができますが、技術的な難易度が高くどこでもできるわけではありません。

化学療法

化学療法とは化学薬品(抗がん剤)を使う方法で、物理的な治療法(手術・肝移植・穿刺療法・肝動脈塞栓術)が使えない場合に行われます。日常生活が支障なくできる体調レベルで重症度が低レベルの場合、抗がん剤による治療が可能です。この方法では、使う薬剤によってさまざまな副作用が高い頻度で起こることが予測されます。
医師や薬剤師に、使う抗がん剤でどのようなことが起こるのかを事前に確かめておきましょう。

肝動脈塞栓術

肝臓内部にあるがんに栄養を送っている動脈をふさぎ、栄養補給を止めて死滅させる方法です。肝動脈にカテーテルを入れ、先端から細胞障害性抗がん剤と造影剤を注入します。
そのあと塞栓材を注入して、血管をふさいだうえ抗がん剤で増殖を抑える方法です。この方法は、悪性度が中か低レベルで3cm異常のがんが3個まで、または大きさを問わず4個以上で手術が難しい場合に適用されます。

経皮的エタノール注入療法

この方法は、超音波画像でがんの位置を確認しながら細い針をがん組織に刺し、内部にエタノールを注入してがん細胞を死滅させます。対象になるがんは直径が3cm以内で3個までの場合です。サイズが大きい場合、エタノールが組織内でうまく拡散しにくいため、治療効果が不十分になることがあります。
この方法は肝細胞がんには効果的ですが、胆管がんや転移性肝臓がんには効果が出にくい方法です。

ラジオ波焼灼療法

この方法もエタノール注入法と同様に、超音波画像を見ながらがん組織に細い針を刺します。針が電極になっており、先からラジオ波電流を流して発熱させてがん組織を壊死させる方法です。
針先の直径2~3cmの球形に壊死がおこり、ほかの肝臓組織には及びません。対象は直径3㎝までで数が3個以内の場合への適用です。死滅させる効果はエタノールより高く、少し大きくても効果が期待できます。

肝移植

患者さんの肝臓を全部取り出して、提供された肝臓を移植する方法です。国内では親族などの肝臓を一部取り出して移植する生体肝移植が主流ですが、2009年の法改正以降は脳死の遺体から提供された肝臓を移植する死体肝移植が増えています。
移植の対象は、他臓器への転移がないことと、がんのサイズや数・腫瘍マーカーの数値が基準をクリアしている方です。成績は良好で、20年生存率は生体肝移植で66%、脳死肝移植で56%になっています。

肝臓がんの予後因子とは?

予後因子とは、病気が今後よくなるか悪くなるかを予測するための要素のことです。
肝臓がんでは肝機能・血管皮膜浸潤・多発性・腫瘍性などが挙げられ、これらの状態で肝臓がんの今後が決まります。

肝機能

肝臓がんの患者さんは、多くが肝硬変です。肝硬変では肝機能が著しく低下して、本来の予備能が失われます。
この状態では、肝臓がん治療の決め手になる切除手術ができません。対応として、手術に代わる代替治療があります。切除に近い効果が期待できるエタノール注入療法・ラジオ波焼灼療法がそれで、肝機能が低下した状態の肝臓がん治療に選択肢が増えました。肝機能や進行度を勘案して適切な治療法が選択でき、予後は決して悪くありません。

血管・被膜浸潤

肝臓がんでは進行して周囲の血管に浸潤したり、皮膜から肝臓実質に浸潤する例があります。血管浸潤では門脈や肝静脈へ浸潤して腫瘍栓ができ、難しい手術ですが近年では切除が可能です。また、皮膜浸潤で肝実質へ進行した場合、内科的な化学療法を実施します。
進歩した抗がん剤で腫瘍が縮小し、その後外科的な切除が可能になる例も珍しくはありません。そして、陽子線治療も選択肢にあります。予後は楽観できませんが、進行がんでも治癒や長期生存例が増える傾向です。

多発性

肝臓がんには腫瘍が複数できる多発性のものがあります。他臓器からの転移や、リスクの強い肝硬変や慢性肝炎によるものです。数が多い場合は効果が高い切除手術や穿刺療法ができない例があり、一般的には予後は良くありません。
対応として検討される治療法は、冠動脈塞栓術または放射線治療です。また放射線でがんを小さくして手術で取れるだけ取り、肝機能の回復を待って再度の切除で取り切る方法も採用されています。こちらの予後はかなり期待できそうです。

腫瘍径

腫瘍の径が4cmを越えるほど大きく増殖している場合、その半数以上では肝臓内には微小ながんが散在しているとされます。このような場合は穿刺療法では対応できません。手段としては切除手術か冠動脈塞栓術と放射線の併用が考えられます。切除手術に大きさの制限はないので、大きいものでも切除できます。
冠動脈塞栓術も血管さえふさげば自滅するので難易度はさほど高くありません。ただし、転移や浸潤により予後に悪影響があります。

関連記事: