「乳がんの手術」にはどんな種類があるかご存知ですか?入院期間も解説!

「乳がんの手術」にはどんな種類があるかご存知ですか?入院期間も解説!

乳がんは女性が罹患する割合が高く、患者数が増えている がんです。乳がんの患者さんは30代から増加し始め、40代後半と閉経後の60代後半がピークの年代です。

乳がんの治療は、外科手術によってがんを取り除く方法が基本となります。

乳房のふくらみを失うことに抵抗を感じる方が多いかもしれませんが、乳房を作り直す再建手術を受けることも可能です。

この記事では、乳がんの手術の種類や特徴・治療方法などについて解説します。

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監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

乳がんとは?

乳がんは乳腺にできる悪性腫瘍です。乳房は乳腺組織と脂肪組織などでできていて、乳腺組織は乳頭(乳首)から扇状に15~20個の乳腺葉に分かれます。一つの乳腺葉は枝分かれした多くの「小葉」と「乳管」で構成されます。

小葉:乳汁を作る組織です。小さな「腺房」という組織が集まり、ぶどうの房のような「小葉」になります。

乳管:乳汁が乳頭まで流れる通り道となるのが乳管です。一つ一つの小葉に付いている細い乳管が連結し、1本の太い乳管となって乳頭までつながります。

乳がんの9割以上が乳管の細胞に発生し、そのなかでも小葉のすぐ近くの細い乳管にできることが多いです。がん細胞が乳管や小葉の内部にとどまっているのが非浸潤がん、がん細胞が乳管や小葉の外に出てしまうものが浸潤がんです。浸潤がんになるとリンパ節や臓器に転移する可能性があり、がんの大きさや転移の状態などによって治療法が異なります。
乳がんの代表的な症状は、乳房にできるしこりです。ほかにも乳頭から血が混じった分泌物が出たり、乳房にえくぼのようなくぼみができたり、乳頭がただれたりすることがあります。

乳がん手術の種類

乳がんの手術には乳房すべてを切除する乳房切除術と、1部だけを切除する乳房部分切除術があり、必要に応じてわきの下のリンパ節を切除する手術も行います。

乳房切除術

乳房切除術とは、乳房全体を切除する手術方法です。乳房の中のがんが大きく広がっていたり、同じ乳房内で複数のがんがあったりする場合などに選択されます。
また遺伝性の乳がんとしてBRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子に変異がある場合は、乳がんや卵巣がんを発症する可能性が高く再発することも多いです。そのため部分切除が可能であっても、予防として乳房を全摘する場合があります。
胸筋は切らずに残し、乳頭・乳輪やしこりの上の皮膚も含めて切除する方法が一般的です。乳腺をすべて切除するため、がんが再発するリスクが少ないのがメリットになります。

乳房部分切除術

乳房部分切除術とは、がんとその周りの1~2センチを部分的に切除する手術方法です。傷が小さく乳房のふくらみを残せることや、体への負担が少ないことなどがメリットです。
しこりの大きさが3センチ程度の場合に実施されますが、しこりが大きくても手術前の薬物療法でがんが小さくなれば部分切除術が可能になる場合もあります。部分切除術の適用にはさまざまな条件があるため、手術前に担当の医師とよく相談することが重要です。
切除した乳腺の断端にがん細胞がないかを手術中に病理検査で調べ、がん細胞があれば切除を追加するか乳房の全摘に切り替えます。残った乳房にがんが再発するのを防止するため、手術後には放射線療法が必要です。
切除後は周囲の乳腺や脂肪を移動し、乳房のへこみを埋めて形を整えます。

腋窩リンパ節郭清

腋窩リンパ節郭清とは、乳がんが転移しやすいわきの下のリンパ節を切除する手術です。わきの下の脂肪組織の塊を切除した後、病理検査で転移の有無や個数を調べます。腋窩リンパ節に転移していると、ほかの臓器にも転移する可能性があると考えられます。
以前は、腋窩リンパ節郭清は乳がんの手術とセットで行われてきました。しかし近年では乳がんの早期発見が増え腋窩リンパ節に転移していない患者さんが多いことや、リンパ節への転移が明らかな患者さん以外は予後の改善につながっていないことがわかってきました。そこで現在では腋窩リンパ節を切除する前に転移しているかを調べる「センチネルリンパ節生検」が実施されています。
センチネルリンパ節とは、リンパ管に入ったがん細胞が最初に転移するリンパ節です。手術前の触診や画像診断でリンパ節への転移が確認できない場合は、センチネルリンパ節を取り出してがん細胞の転移を調べます。
転移が発見されれば腋窩リンパ節の切除を行いますが、転移がない場合は省略が可能です。

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