モルスタ出身の金融エリート、55歳で障害者支援の弁護士に 「金権派」はなぜ「人権派」へ?

モルスタ出身の金融エリート、55歳で障害者支援の弁護士に 「金権派」はなぜ「人権派」へ?

●刑務所とシャバ、「ぐるぐる」の輪を断ち切りたい

法律家として、馴染みのある金融分野を専門にしようと考えたこともあったが、司法修習時代に興味を持ったのは刑事弁護。特に知的障害や精神障害(統合失調症、依存症、発達障害など)に起因する事件だったという。典型的なのは、窃盗、薬物、痴漢、盗撮などだ。

「刑務所とシャバ(娑婆)をぐるぐる回っている人たちを見たんです。本人もやめたいんだけど、やめられない。本当に植木等の『わかっちゃいるけどやめられない』、山本リンダの『もうどうにもとまらない』のような状態です。これを何とかできないかなと思いました」

薬物をやめたい人を支援する施設「DARC(ダルク)」の立ち上げにもかかわった故・奥田保弁護士ら、問題に取り組む弁護士たちとの付き合いも生まれ、「活動から抜けるに抜け出せなくなってしまいました」。

2014年12月に55歳で弁護士登録した「オールドルーキー」は、単位会や東京三会の障害者刑事の委員会や協議会に所属。現在ではそれぞれで中心人物になっている。

●この20年で犯罪が激減、再犯防止に注目集まる

メディアでは凶悪犯罪が取り上げられがちだが、刑法犯の認知件数は2002年(285万4061件)をピークに大幅減少。2024年は70万3351件でおよそ4分の1になっている。

一方、この20年で初犯者数が大幅に減ったことで再犯者率(検挙された刑法犯に占める再犯者の割合)が高まり、再犯防止の重要性に目が向けられるようになった。

何度も罪を犯してしまうケースでは、障害や病気が関係していることが多い。刑務所にただ閉じ込めておくのではなく、裁判なども含めて、治療や改善更生を図り、二度と刑務所に戻ってこなくても良いよう社会復帰してもらうことが大切だ。

2016年には再犯防止推進法、2017年には再犯防止推進計画ができ、裁判所や検察の障害者への対応も大きく変わってきたという。

「ちょっと前の裁判所だと、更生支援計画を出しても、被告人のやったことと何の関係があるんだ、今論じているのは過去の話だろう、という反応が珍しくありませんでした。今は裁判所もその辺りをちゃんと見てくれるようになりました」

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