友人からの借金を除外して個人再生を申立てることはできる?

友人からの借金を除外して個人再生を申立てることはできる?

3、個人再生の申立時に友人からの借金を除外するとどうなる?

個人再生の申立時に友人からの借金を除外しても、「黙っていれば分からない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、一部の債権者を除外して申立てると以下のリスクを負うことになりますので、故意に友人からの借金を除外して個人再生を申し立てるのはやめておきましょう。

(1)発覚すると追加される

個人再生を申立てた後の手続き中に、債権者一覧表に掲げていない債権があることが判明した場合は、当然ですがその債権者も個人再生の手続きに追加されます。

そのため、結局は友人に迷惑をかけることになってしまいます。

個人再生を申し立てる際には、申立書に通帳のコピーも添付して裁判所に提出する必要があります。

友人からお金を借りたときの履歴が通帳に残っていれば、裁判所や個人再生委員にバレてしまいますので、「黙っていれば分からない」という考え方は通用しません。

(2)個人再生による返済額が増えることがある

友人からの借金のみを先に返済していた場合は、個人再生による返済額が増えてしまう可能性があります。

なぜなら、偏頗弁済した金額は清算価値に加えなければならないからです。

偏頗弁済とは、一部の債権者にのみ優先的に返済することをいいます。

清算価値とは、債務者が有する換金可能な財産の総額のことです。

個人再生では、債務を大幅に減額してもらえる前提として、債務者が有している財産総額以上の金額を返済しなければならないこととされています。

この前提のことを「清算価値保障の原則」といいます。

例えば、債務の総額が300万円の場合は個人再生によって100万円にまで減額することが可能です。

しかし、債務者が総額150万円の財産を有している場合には、150万円以上の金額を返済しなければならないことになります。

財産総額が80万円の場合、返済額は100万円で済むはずですが、友人に対してのみ100万円を優先的に返済していると、その他の財産80万円との合計180万円以上を返済しなければなりません。

偏頗弁済した100万円はすでに債務者の手元にはありませんが、本来ならすべての債権者への返済の引き当てになるはずだったお金といえます。

ですので、債権者平等の原則を守るために、偏頗弁済した金額は清算価値に加えるという形で、他の債権への返済額を増やすことになるのです。

(3)申立てが棄却されることもある

上記2点のリスクのみであれば、大した問題ではないといえるかもしれません。

しかし、故意に友人からの借金を隠して個人再生を申立てたことが発覚すれば、申立てが棄却される可能性があります。

民事再生法では、「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき」には、裁判所によって申立てが棄却されることになっています(同法第25条4号)。

「棄却」というのは、裁判所が申立ての内容を確認して検討した結果、申立てを認めないという判断を下すことをいいます。

友人に迷惑をかけないために友人からの借金のみを除外して個人再生を申し立てるということは、「不当な目的」での申立てに当たりますし、誠実な申立てともいえません。

単に友人からの借金を債権者一覧表に計上し忘れただけという場合は、友人からの借金を追加する形で補正すれば申立てが認められるでしょう。

しかし、故意に友人からの借金を隠そうとして発覚したような場合は、申立ての棄却を覚悟しなければなりません。

4、友人からの借金を除外して個人再生を申立てる方法と注意点

友人からの借金を除外して個人再生を申立てる方法が一切ないのかというと、そうでもありません。

以下の形を取れば友人からの借金を除外して申立てることも可能ですが、注意すべきポイントもありますので、しっかりとご確認ください。

(1)友人に債権放棄をしてもらう

ひとつ目の方法は、申立前に友人に債権放棄をしてもらうという方法です。

そうすれば、友人は債権者ではなくなるので、個人再生の申立てに加える必要はありません。

友人に迷惑をかけたくないという場合は、個人再生による返済がすべて終わった後に、改めて友人に返済することもできます。

債権放棄をしてもらっても、その後に債務者が任意に返済をするのは自由だからです。

そこで、友人に対しては事情を説明して納得してもらった上で、いったん債権放棄をしてもらうように頼むと良いでしょう。

(2)第三者から一括返済をしてもらう

ふたつ目の方法は、友人に対して自分で返済するのではなく、第三者から一括返済してもらうという方法です。

第三者が返済したのであれば偏頗弁済にはなりませんし、清算価値が増加するという問題もありません。

家族や親戚などに頼れる場合は、友人への一括返済をお願いすると良いでしょう。

この場合も、個人再生による返済が終了した後であれば、肩代わりしてくれた家族や親戚等へ返済するのは自由です。

(3)自分で一括返済した場合の注意点

自分で友人へ一括返済した場合には、個人再生による返済額が増えるリスクがあるということを前記「3」(2)で解説しました。

しかし、逆にいえば、そのリスクを甘受するのであれば一括返済も可能ともいえます。

例えば、債務者の保有資産の総額が20万円で、友人に対して50万円を偏頗弁済した場合、清算価値は合計70万円となります。

個人再生における最低弁済額は100万円なので、この場合は結果的に手続きには何ら影響ないことになります。

しかし、保有資産のうち何をどの範囲で清算価値に加えるべきかという問題は複雑であり、思わぬものを資産として清算価値に加えなければならないこともあります。

したがって、ある程度まとまった金額の偏頗弁済をすると、やはり個人再生による返済額が増えてしまう可能性があると考えておくべきです。

また、偏頗弁済が発覚すると、小規模個人再生では他の債権者からの不同意の意見によって、再生計画案が不認可となるおそれもあります。

ですので、安易に友人への一括返済を行うべきではありません。

どうしても一括返済したい場合や、すでにしてしまった場合は、弁護士に相談して対応策についてアドバイスを受けましょう。

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