5、個人再生の申立てで友人からの借金を含めると返済額が減る?
少し話は変わりますが、個人再生の申立てで友人からの借金を含めると、金融機関である債権者へ返済金額は減ることになります。
例えば、個人再生による返済額が100万円となる場合、債権者のすべてが金融機関であれば、そのまま100万円を金融機関へ返済しなければなりません。
それに対して、100万円のうち10万円が友人の債権だとすれば、金融機関への返済額は90万円となり、あとの10万円は友人へ返済することになります。
以上は当然の話ですが、もし、再生計画案の認可後に友人が返済を猶予してくれたとすれば、債務者は90万円しか返済せずに借金を整理できることになります。
しかし、このような計画を友人と示し合わせて個人再生を申立てることは、やってはいけません。
なぜなら、再生計画案認可後の返済の段階においても、「債権者平等の原則」が適用されるからです。
最初から一部の債権者から返済猶予を得ることを示し合わせて個人再生を申立て、再生計画案が認可された場合は、「再生計画が不正の方法により成立したこと」に該当するものとして、再生計画の認可が取り消されるおそれがあります。
個人再生による返済が厳しいときに、債権者である友人に頼んで待ってもらうことは問題ありませんが、金融機関への返済額を減らす目的で、最初から返済するつもりのない(その旨の合意をしている)借金を計上することはやめておきましょう。
6、個人再生で友人に迷惑をかけたくないときの対処法
個人再生を利用したいけれど、友人にも迷惑をかけたくないという場合は、前記「4」(2)でご紹介した第三者に一括返済してもらうことが最も手早い解決方法となるでしょう。
それができないという場合は、以下の対処法を検討してみましょう。
(1)再生計画終了後に免除された債務を返済する
ひとつ目の対処法は、再生計画終了後に、免除された友人への債務を返済するという方法です。
再生計画案が認可された後は、減額された後の債務を3年~5年で分割返済していきます。
その間は、友人に対しても減額後の金額のみを分割返済することになります。
このようにして再生計画の履行を終了すると、減額された分の債務は免除されることになります。
そして、免除された債務は「自然債務」となります。
自然債務とは、債権者から支払いを請求することはできないものの、債務者から任意に支払うのであれば債権者が受領できるという状態の債務のことです。
再生計画に基づく返済をすべて終了した後であれば、もう「債権者平等の原則」は働きませんので、友人にのみ全額返済することも自由にできます。
ただし、この方法で友人からの借金を完済するには、少なくとも3年~5年という期間を要します。
早期に解決したいという場合は、次の対処法を検討することになります。
(2)任意整理を選択する
任意整理とは、個別の債権者と任意に交渉することによって、債務の返済額や返済方法を変更する手続きのことです。
裁判所を介しない任意の手続きであるため、任意整理では「債権者平等の原則」は働きません。
そのため、金融機関からの借金のみを任意整理で減額し、友人からの借金はそのまま全額返済しても問題はありません。
借金総額が比較的少ない場合は、任意整理での解決を検討すると良いでしょう。
(3)自己破産を選択する
任意整理では大幅に借金を減額することは期待できません。
そのため、多額の借金を抱えている場合は自己破産も視野に入れてみましょう。
自己破産では、免責が許可されるとすべての債務の返済義務が免除されます。
免除された債務は、個人再生の場合と同様に「自然債務」となります。
そのため、免責許可決定の確定後に債務者から任意に友人に全額返済するのは差し支えありません。
自己破産の手続きは、個人再生よりも早期に終了します。
同時廃止事件の場合、申立てから免責の確定間の期間はおおよそ3か月~4か月程度です。
自己破産と個人再生のどちらを選択すべきかは、さまざまな要素を考慮して判断すべきですが、友人からの借金を全額返済するためには自己破産の方が断然早いといえます。
なお、自己破産も裁判所を介した強制的な手続きですので、「債権者平等の原則」が働きます。
そのため、友人からの借金のみを除外して自己破産を申立てることはできませんので、ご注意ください。
配信: LEGAL MALL