ハーラー症候群の治療
ハーラー症候群の治療は、対症療法、酵素補充療法、造血幹細胞移植を組み合わせて行われます。
対症療法
個々の症状に応じた対症療法が実施されます。
慢性中耳炎には鼓膜チューブの挿入、睡眠時無呼吸症候群には扁桃腺切除や経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)、気管切開が行われます。
心弁膜症に対しては薬物療法や手術、水頭症には脳室腹腔シャント術が適用されます。
角膜混濁には角膜移植、関節変形や骨折には整形外科的手術が検討されます。
酵素補充療法
酵素補充療法として、α-L-イズロニダーゼの遺伝子組換え製剤である「ラロニダーゼ」を週1回点滴静注します。
定期的に酵素補充療法を実施することにより、いくつかの症状の改善が期待できますが、補充された酵素は脳に到達しにくく、中枢神経障害の進行を止める効果は限定的です。また発熱や蕁麻疹などの副作用リスク、抗体産生による効果消失の可能性もあります。
造血管細胞移植
造血幹細胞移植は生涯にわたる酵素供給を可能にし、生後2年未満で移植が行われた場合のより高い効果が認められていて、中枢神経系への効果も期待できます。
しかし、ドナーの確保が困難な場合や、移植片対宿主病のリスクがあるため、適応は慎重に検討する必要があります。
(出典:日本先天代謝異常学会「ムコ多糖類(MPS)Ⅰ型診療ガイドライン2020」)
ハーラー症候群になりやすい人・予防の方法
ハーラー症候群は常染色体劣性遺伝性疾患であり、両親がともにIDUA遺伝子の変異を保有している場合、産まれてくる子どもが発症する可能性があります。
現時点では予防法はありませんが、遺伝的リスクがある家族は遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。
ハーラー症候群は、ムコ多糖症Ⅰ型のうちの最重症型で、進行性かつ多臓器に障害を及ぼす重篤な疾患ですが、近年は酵素補充療法や造血幹細胞移植などにより治療成績が改善しつつあります。早期診断と多職種による包括的ケアが、予後と生活の質の向上に不可欠です。
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参考文献
小児慢性特定疾病情報センター75ムコ多糖症Ⅰ型
日本先天代謝異常学会ムコ多糖類(MPS)Ⅰ型診療ガイドライン2020
難病情報センターライソゾーム病(指定難病19)
国立研究開発法人国立成育医療研究センタームコ多糖症
ムコ多糖症.comムコ多糖症Ⅰ型

