商店街の朝は、たいてい静かに始まる。布施のブーランドーリ1番街も例に漏れず、シャッターが上がる音と、パンの焼ける香りが目覚まし代わりになる。その香りをたどると、カフェ・ド・ルワンジュ。
カウンター越しの湯気、トーストに落ちるバター、くゆる煙草。それぞれの朝が交差するこの場所には、日常にふと添えたくなるような“ほめ言葉”が、ちゃんとある

ルワンジュって、つまり“ほめ言葉”
この喫茶店の名前は、フランス語で“賛辞”や“賞賛”を意味する「Louange(ルワンジュ)」から。
「ほめられる店でありたいんです」と笑うのは、店を切り盛りするマスター。
その言葉どおり、食材選びから一皿の盛りつけまで、丁寧でさりげない心配りが行き届いている。

入り口に並ぶのは、自家焙煎の炭火コーヒー豆。袋を開けた瞬間の、あの香ばしさだけで気持ちがすっと整うから不思議だ。
一杯ずつハンドドリップされたコーヒーは、酸味とコクのバランスが絶妙で、どこか懐かしい味がする。
コーヒーは“空気”ごと、味わうもの

「コーヒーは器具や水、飲むときの雰囲気にまで影響されるデリケートなものです」
そう語るマスターの言葉のとおり、ここでは素材と抽出のすべてに妥協がない。豆は焙煎にこだわった厳選品。しかも、豆の雑味を避けるために使われるのは、無漂白のフィルターペーパー。
アイスコーヒーにはネル(布)フィルターを使用し、一杯ずつハンドドリップ。コーヒーを入れるその手つきからも、時間と香りを大切にしているのが伝わってくる。
