長沢蘆雪《菊花子犬図》個人蔵 前期・後期展示
①火を用いて絵を描く? 江戸時代に流行した焼絵の魅力とは。『焼絵 茶色の珍事』(板橋区立美術館)
稲垣如蘭「三十六鱗図(登龍門図)」江戸時代(18~19世紀)、彌記繪菴
「焼絵」という、ちょっと聞き慣れない言葉を知っていますか?それは熱した鉄筆や鏝などを紙や絹に押し当て、絵や文字を表現した作品です。板橋区立美術館で開催される『焼絵 茶色の珍事』では、この燃えやすい素材に火を用いた技法で描くという、ユニークで稀な作品に光を当てます。
焼絵が静かに流行したのは江戸時代。歌文集には「いといと珍らかにこそ(非常に珍しいことである)」と記されるほど、当時もめずらしい存在でした。中でも近江・山上藩主・稲垣定淳(号・如蘭)はこの技法に夢中になり、弟子たちとともに作品を残しています。焦げ茶色の線だけで花鳥や人物を描き出すその筆致は、水墨画にも通じる繊細さと深みをたたえています。
本展では、日本の焼絵に加えて、中国の「火画(ひが)」や朝鮮の「烙画(らくが)」など、近隣の国々に伝わる同系の表現も紹介。また、電熱ペンで木に描く現代の作家による作品も登場し、過去と現在の焼絵がひとつの場で響き合います。
文献上では平安末〜鎌倉時代頃に「焼絵」の記述が確認され、現存作例は江戸時代以降となる焼絵。地味なようで、見れば見るほど味わい深い焼絵の世界を、この春、板橋でのんびり覗いてみてください。
如秀「亀図」江戸時代(18~9世紀)、彌記繪菴
展覧会情報
『焼絵 茶色の珍事』 板橋区立美術館
開催期間:2026年3月7日(土)~4月12日(日)
所在地:東京都板橋区赤塚5-34-27
アクセス:都営三田線「西高島平駅」下車徒歩約14分。
開館時間:9:30~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:月曜日
観覧料:一般900円、大学生600円、高校生以下無料
美術館サイト: 焼絵 茶色の珍事
②「眼をもつモノ」を通して、モノと人の関係を問い直す。『モノたちの眼——メラネシア造形物と密やかなバイオグラフィ』(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)
モノたちの眼——メラネシア造形物と密やかなバイオグラフィ
慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)で開催される『モノたちの眼——メラネシア造形物と密やかなバイオグラフィ』は、モノと人との関係を問い直す意欲的な展覧会です。文学部民族学考古学研究室との共同企画により、同研究室が長年管理してきたメラネシア(※)の祖霊像や神像、仮面など、眼をもつ造形物が展示室に集います。
人間の眼で見るのではなく、モノたちの眼から世界を見つめる。本展ではそのような視点の転換を誘います。彼らがどのように作られ、使われ、収集され、展示されてきたのか。そのバイオグラフィに目を向けることで、モノに動かされてきた人間たちの営みも浮かび上がります。
20世紀初頭から独領ニューギニアで貿易商を営んだ小嶺磯吉によって収集され、後に慶應義塾大学に寄贈されたウリやマランガンと呼ばれる木製祖霊像をはじめ、秋田県内岱遺跡の縄文時代の岩偶(重要文化財)などを公開。さらに後期青銅器時代に遡るシリアのバアル神像といった、時代も地域も異なる「眼をもつモノ」たちが並びます。
慶應義塾大学三田キャンパス 東別館に位置する慶應義塾ミュージアム・コモンズは、JR田町駅より徒歩8分、都営地下鉄三田駅から歩いても7分ほど。入場無料、予約も不要で観覧できますが、土曜の特別開館日(3月28日、4月18日、5月9日)を除く土日祝は休館日です。お出かけの際はご注意ください。
※太平洋南西部、赤道の南、東経180度の西の地域。ニューギニア島、ビスマーク諸島、ソロモン諸島などの島々がある。
ウリ像とマランガン彫像(木製祖霊像)|ビスマルク群島 ニューアイルランド島|20世紀初頭収集|慶應義塾大学文学部民族学考古学研究室所管
展覧会情報
『モノたちの眼——メラネシア造形物と密やかなバイオグラフィ』 慶應義塾ミュージアム・コモンズ
開催期間:2026年3月9日(月)〜5月15日(金)
所在地:東京都港区三田2-15-45 慶應義塾大学三田キャンパス東別館
アクセス:JR山手線・京浜東北線「田町駅」徒歩8分。都営浅草線・三田線「三田駅」徒歩7分。
開館時間:11:00~18:00
休館日:土日祝、3月23日(月)、4月29日(水)〜5月6日(水)
※特別開館:3月28日(土)、4月18日(土)、5月9日(土)
観覧料:無料
ミュージアムサイト: 『モノたちの眼——メラネシア造形物と密やかなバイオグラフィ』 慶應義塾ミュージアム・コモンズ
