まかないと家族の境界線がない店
厨房に立つのはママひとりじゃない。スタッフの多くは、お母さん世代の女性たち。

昼と夜のあいだ、静かになった店内に「これ、美味しかったわね」なんて声が響く。忙しいはずなのに、せかせかしてない。ちょっと笑って、ちょっと休んで、また手を動かす。
タイミングが合えば、娘さんが店にやってきて、まかないを食べながら、今日の出来事をママに話している。それは“家族のような店”というより、“ほんとうに家族がいる店”。
仕切りのない空間。境界線のない時間。客も、スタッフも、家族も、ふとした拍子に混ざり合っている。
惣菜屋から、食堂へ。でも、変わらなかったこと
「若い子が来る店になると思ってたのよ」
ママはそう笑う。開店は2020年、韓国ブームが盛り上がっていた頃。もっとポップで、華やかなお店になる予定だった。

でも、ふたを開けてみれば──あの惣菜屋に通っていた常連さんたちが、変わらず足を運んでくれた。
「気づいたらね、40代50代のお客さんが多くて。あんまり、変わってないのよ」
流行りのメニューもあるけれど、みんなが求めてるのは、あの頃の“おかず”だった。惣菜屋から食堂へ。姿は変わっても、食卓の本質はそのままだったのかもしれない。
