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【東大阪】2代目夫婦が守る、火とタレとまちの夜。【串焼酒場 かん八】

布施の町に、赤い光がある。雑居ビルのすき間にぽつんと現れるその看板は、ちょっと強めの色合いなのに、不思議と町の景色になじんでいる。焼き鳥屋「かん八」は、昭和の終わりに生まれて、気づけば40年をとうに超えていた。

火の前に立つのは、2代目の店主。母から直接教わったわけじゃない。ただ黙って、火と手を見て覚えた味がある。夫婦ふたりの趣味や私情がにじみ出た店内で、今日もまた、一本の串が焼かれている。

派手じゃないけど、ちゃんとあたたかい。そんな場所が、町にひとつあるということ。

赤い光がにじむ夜に

布施駅東口から、東一条通りを少し歩く。ふいに視界を射抜くような赤い光が、雑居ビルの隙間に浮かんでいる。焼き鳥屋「かん八」──その看板の存在感は、いまの時代にはちょっとめずらしいくらいの直球勝負だ。

「炭火焼」「名代とり串焼」「名物ホルモン串焼」。黒字の太文字で描かれた文字が、赤地の看板にズバッと映えている。昭和の終わりに生まれたデザインは、いま見ればどこか新鮮で、つくりものではない優しさがある。

創業は40年以上前。2025年の今ではもう、すっかり町に根づいた風景だ。かつてこの周辺には証券会社や金融機関が入るビルも多く、仕事帰りのスーツ姿たちが、赤い光の下に吸い込まれていったという。

今は、近所の人たちや家族連れが、ふらりと晩酌に訪れる。一日の終わりと、夜のはじまりのあいだに、この店はそっと灯っている。

火のそばで、言葉のない伝承

焼き台の前に立つのは、二代目店主。この店をずっとひとりで守ってきた母の手伝いを始めたのが10年前(取材時2025年)。3年前、結婚を機に店を引き継いだ。

「教えてもらったことは、ひとつもないんです」そう言って笑うその手は、驚くほど迷いがない。火の強さ、串の返し方、焼き上がりの見極め。すべては焼き台の横で、母の手を見て覚えた。

黙って見て、感じて、繰り返す。言葉のない継承が、この店にはあった。

味の要となるのは、創業から継ぎ足しで受け継がれる“秘伝のタレ”。厨房の片隅に置かれた大きなカメの中で、静かに、でも確かに生きている。

甘すぎず、でも鶏の脂と煙にしっかり応える芯のある味。日々の焼きのなかで、ほんの少しずつ加え、少しずつ育てていく。変わらないようで、ちゃんと変わっている。そんな“時間の味”が、一本一本の串にまとわりついていた。

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