PSA検診を受けるべきか
50歳以上の男性に推奨される理由
前立腺がんの診断で最も重要な検査がPSA(前立腺特異抗原)検査です。PSAは前立腺液中から分泌されるタンパク分解酵素で、採血だけで測定できる腫瘍マーカーとして広く用いられています。
PSAを測定する機会としては、主に50歳以上を対象とした職場の健康診断や、排尿障害などで泌尿器科を受診した際の検査があります。PSA検査普及以前、前立腺がんは、骨の痛みなど転移による症状から見つかるケースが多かったようです。PSA検査の普及により、現在ではそのような進行した状態で発見されることは、少なくなってきています。
知っておくべきデメリット
沼尾医師は「PSA測定にはメリットとデメリットがつきものです」と指摘します。
メリットとしては、早期に前立腺がんの可能性を知ることができ、転移がんの罹患率や前立腺がんによる死亡率の低下につながる点が挙げられます。
一方、デメリットは過剰診断・過剰治療の問題です。前立腺がんには治療しなくてもいいがんが一定の割合で存在します。沼尾医師は「PSA検査でそれを見つけてしまったために治療をすることになり、QOL(生活の質)が落ちてしまう。本来放っておいてもよかったがんも、治療対象になってしまう」とデメリットを説明しました。
泌尿器科学会の見解「弱く推奨」
こうしたメリット・デメリットを踏まえ、日本泌尿器科学会は中高年男性に対するPSA検査による前立腺がん検診について「行うことを弱く推奨する」という見解(前立腺癌診療ガイドライン2025年版)を示しています。
理想的には、PSAを測定する際に医療者がメリットとデメリットについて情報提供を行い、個々の人の意向に従って検診を実施することが好ましいとされています。沼尾医師は「50歳以上ではPSA検診を受けた方がいい。50歳代で進行した状態でがんが見つかると、残念ながら亡くなってしまうこともあります」と述べ、メリット・デメリットを理解した上での受診を推奨しています。
PSAが高いと言われたら
異常値が出ても慌てない
PSA検査で異常値が出た場合、通常はまずMRI検査から、問題があれば生検(採取した組織の一部にがん細胞があるかを調べる検査)へと進みます。PSAの基準値は一般的に4ng/mL以上が異常とされており、数値が高くなるほどがんの確率は高まります。PSAが10以上だとがんの可能性は相当高いとされています。
ただし、PSAが高いからといって必ずがんというわけではありません。前立腺肥大症や前立腺炎などでもPSA値は上昇することがあります。
MRI検査で何がわかるか
MRI検査は生検前に必須の検査です。現在のMRIは非常に進化しており、複数の撮像法を組み合わせた「マルチパラメトリックMRI」によって、前立腺内の怪しい部分を高精度で確認できます。
怪しいところがあれば次の生検へ進み、なければ経過観察となることもあります。ただしMRIで怪しくなくても小さながんが隠れていることがあるため、主治医の判断によっては生検を行う場合もあります。
確定診断のための前立腺生検
がんの確定診断には前立腺生検が必要です。肛門から超音波のプローブを挿入し、バイオプティーガンという特殊な針で前立腺の組織を採取します。局所麻酔または全身麻酔で行われ、1回の検査で10~20カ所から組織を採取するのが一般的です。
最近では、MRI画像を取り込んで超音波画像に重ね合わせることで疑わしい部位をより正確に把握する技術(MRI・超音波融合生検)も普及しており、より精度の高い組織採取が可能になっています。

