●無視したら?「知らなかった」と言い張れば逃げられる?
財産開示の呼び出しを無視したらどうなるでしょうか。裁判所からの通知を受け取らず「知らなかった」と言い張れば、財産開示しなくていいし、刑事罰も逃れられるのでは?と思うかもしれません。
しかし、これはそう簡単ではありません。
たしかに、刑罰を科すためには「故意」が必要です。裁判所からの通知を一切受け取らず、「財産開示手続きが行われていることを一切知らなかった」と主張することで、「財産開示手続きを無視した」という認識(つまり故意)がなく無罪である、という主張をすることが考えられます。
しかし、「一切知らなかった」という主張はそう簡単には認められません。
裁判所が呼び出しを送っても相手が受け取らない場合、「付郵便送達」という方法がとられます。書留郵便に付して発送した時点で送達の効力が生じる方法で、相手が実際に受け取ったかどうかに関係なく、法律上は「送達した」ことになります。
けんすうさんは、「警察は『付郵便送達なんで、相手方がその呼出しについて知らない可能性もありますよね、だから故意があったとは言えないですよね』となるので、基本的に告訴が不受理になると思うんですよね」と指摘しています。
ですが、実際には、故意が認められる可能性は十分にあると考えられます。以下、簡単に理由を説明します。
まず、この付郵便送達は、他の送達ができない場合に行われるものです。そこで、付郵便送達をするまでに、「本当に送達ができない状況なのか」が調査されます。
具体的には、債務者がその住所に実際に居住しているかどうか確認するため、電気・ガスメーターの稼働状況、郵便受けの郵便物の状況、表札の有無などを記録した調査報告書が裁判所に提出されます。この結果、「その住所に確かに住んでいる」のに「何度送達しても受け取らない」という経緯が記録として積み重なります。
直接債務者が配達員に面と向かって「裁判所からの郵便物を受け取りません」と言っていなかったとしても、そのような経緯が積み重なると、「知らなかった」という言い訳は認められにくくなります。
むしろ「その場所にはいるはずなのに送達を拒絶した」という認定がされるリスクがあります。
次に、告訴というのは、あくまでも犯罪が行われている可能性がある場合に、捜査を開始するきっかけですので、告訴をする側で犯罪の成立要件を全て立証する必要は当然ありません。
この点は警察官も誤解して不当に告訴を受理しないケースがありますが、故意の有無は警察が捜査によって明らかにすべきことです。
債務者が不当に告訴を受理しない状況なのかどうかは、警察が捜査によって明らかにすべきことです。
●近年の逮捕例など
判例集などに登載されている裁判例は見当たりませんでした。これは、近年の改正であり件数が少なそうであることや、仮に起訴されたとしても略式起訴となっているからではないかと推察されますが、逮捕の報道はいくつかあります。
2026年1月28日には、香川県で裁判所からの財産開示の呼び出しに出頭しなかった建設業の男が逮捕されています。
2026年2月には、財産開示に応じず裁判所に出頭しなかった疑いで新潟市東区の29歳の男が逮捕されたと報じられています(NST新潟ニュース、2月15日)。
また、2026年1月には、仙台で、訴訟で確定した賠償金を支払わなかった47歳の女性が裁判所からの財産開示の呼び出しに応じなかった件で、いったん不起訴となったものの、検察審査会で不起訴不当の議決がされ、その後略式起訴されたことが報じられました(読売新聞オンライン、1月9日)。

