●「再審開始」より「取り消し」が有利?
興味深いのはここからだ。指宿教授らは、管理職への異動可能性を比較した。
「再審開始決定を出した裁判官グループ」のスコアは0.139だったが、「開始決定を取り消した裁判官グループ」は0.583と、後者のほうが昇進傾向が強かった。
もっとも指宿教授は「裁判官は再審請求事件以外にもたくさんの仕事をしているので、再審開始決定やその取り消しをしたことだけがその裁判官の人事異動を考慮する要素になることはありえません」と前置きしたうえで、次のように語る。
「再審開始決定を出すのは下級裁判所で、それを取り消すのは上級裁判所の裁判官なので、すでに良いポジションにいる人たちであることを加味しても、両者の差があまりに大きすぎないかというのが私たちの意見です。全体としてみると、再審開始の決定をした裁判官が不利な人事を受けている可能性があるという傾向がデータとして出たと思います」
●「裁判官ガチャ」が議論されていない
再審法改正をめぐっては、超党派の議連が改正案をとりまとめ、法制審議会も見直し案を答申。現在、自民党内で政府案の検討が進んでいる。
こうした動きについて、指宿教授は根本的な問題を指摘する。
「裁判官が、同僚や先輩がした判断を覆す仕組み自体に限界があります。そして、再審法をめぐる議論では『裁判官ガチャ』の問題が十分に扱われていません。
良い裁判官に当たらないと再審請求が通らないことは、業界の中では常識になっていますが、それは今回の法改正の中で適切に言語化することが難しい問題です。
本来は、裁判官こそが変わらないといけません。法律が変わっただけでは再審をめぐる問題は変わらないと思います」

