500本の現場を知るフードコーディネーター
はらゆうこさんはフードコーディネーターとして、ドラマ・映画・CM・MVなど500本以上の映像作品に携わってきた。大学卒業後8年間の公務員生活を経て、30歳を前に日本最古の料理学校「赤堀料理学園」に入学。赤堀博美校長のアシスタントを経て2010年に独立し、「日本一忙しいカメラ裏の料理人」として知られる存在になった。
料理を美しく整えるだけでなく、監督の迷いを引き受け、役者のキャラクターに合った一皿を現場でゼロから起こす。そのフードコーディネーターという仕事の裏側を語ってもらった。
10数回の試作が生んだ、あのお赤飯
2023年に大きな話題を呼んだドラマ『VIVANT』。劇中に登場するお赤飯の担当が、はらさんだった。セリフの中で「とらやのお赤飯」と言及されていたため、それが目標値になった。
しかし最初の試作は、監督にあっさり否定された。「あのお赤飯、食べたことあるのか?」と問われ、「写真で見ました」と答えると、「ダメだよ!」と一喝された。小豆やささげの色だけであの濃さを出すにはどうすればいいのか。調べて試作を重ねたが「色が違う」「ツヤ感も違う」とダメ出しが続いた。
「最後の方はもう自信がなくなってしまって、『……どうですかね?』と恐る恐る持っていく状態でした」
転機になったのは、監督自身の料理レシピが現場に届いたことだ。
「この通りじゃなくてもいいし、自分で考えてやってごらん」と言われ、一度その通りに作ってみたら、スッと色が出た。作り直して持っていくと、ようやく「ああ、これだね」という言葉をもらえた。
それでも本番当日の朝、ふかしてみるといつもと色が違う。夕方からの撮影に向けて急いで作り直し、万全の準備で臨んだ。日によって色の入り方が変わる。それがお赤飯という素材の難しさだった。

