●法務省・検察が「本質をぼかしている」
──非公開の会議では、どのような議論がおこなわれているのでしょうか。
稲田議員:会議には自民党議員だけでなく、法務省の刑事局長や審議官も出席しています。私は、法務省が議連案を潰す目的で法務省案を出してきたと見ています。
「確定判決の法的安定性」を理由にしていますが、それは判決が適正である場合の話です。実際には不当な有罪判決があります。しかも、福井事件では検察側が証拠を隠して有罪に導いた強い疑いがある上、第1次再審開始決定に抗告をして冤罪の救済を13年も遅らせたのです。
果たしてこれが「公益の代表者」としてのふるまいでしょうか。「検察には公益の代表者として抗告する必要がある」と言われると、強い違和感があるんですよね。
それに、法務省刑事局の反論の仕方が非常に不誠実です。
たとえば、「誤った再審開始決定が抗告によって是正される」と説明しますが、福井事件の第1次再審請求において、裁判所が再審開始決定したことへの検察の抗告は正しかったのか。
無罪の証拠を隠して不服申し立てをし、再審開始決定を取り消させたことが正しいはずはありません。むしろ、検察官による抗告が正義に反するのです。

ただ、抗告禁止の必要性は一見してわかりにくい。私自身も実際の勉強をしてようやく理解できました。
その過程で、法務省がなぜ冤罪の救済が遅れたのかという立法事実の本質をぼかし、一般論として「法的安定性」や「公益の代表者」を持ち出して説明していることに強い怒りを感じています。
配付される資料の作り方にも問題があると感じています。
法務省案は、一般の議員であれば騙せる内容だと思います。私も1年前なら騙されていたかもしれません。
●「若手の検事が内部から声をあげて」
──検察は、再審無罪になった袴田巌さんを犯人視するような検事総長談話を出しましたが、あれを読むと怖さを感じます。
稲田議員:福井事件のように、検察が刑事司法の信頼を揺るがすようなことをしてしまったら、本来は内部の検証ではなくて、第三者による検証が必要です。しかし、内部の検証すらおこなわれていません。
組織防衛を優先し、誤りを認めず、検証もしない。それでは本当に組織全体がダメだということになってしまう。検察に対する国民の信頼が揺らいでいます。
だからこそ、若手の検事が内部から声をあげていく気概を持ってほしいと思いますし、自民党も「これはおかしい」と言える政治家の集団でなければなりません。


