アルツハイマー病の脳内変化は30年前から始まる? 身近な「あの検査」で早期診断可能な未来も

アルツハイマー病の脳内変化は30年前から始まる? 身近な「あの検査」で早期診断可能な未来も

最大45%は防げる? 生活習慣でリスク下げられる可能性も

最大45%は防げる? 生活習慣でリスク下げられる可能性も

編集部

認知症は予防できないという声も根強いですが、最新の医学的な知見はいかがでしょうか?

山田先生

近年は、認知症の発症リスク全体を100%とした場合、そのうち最大45%は、生活習慣や環境などの修正可能な要因で説明できる可能性があると報告されています(Lancet. 2024 Aug 10;404(10452):572-628)。つまり、遺伝など変えられない要因もある一方、日々の選択でリスク低減に寄与できる部分が半分近くあるということです。ここで重要な点は、根拠のある要因に焦点を当てることです。

編集部

「変えられるリスク」として具体的にはどのような要因が挙げられますか?

山田先生

たとえば、難聴、喫煙、高血圧、アルコール、頭部外傷、身体活動の低さ、社会的孤立、視力の問題などです。幼少期の教育機会も含め、人生の各段階でリスクが整理されており、多くは日々の選択や医療アクセスで改善余地があります。

編集部

すぐに実践できる予防のポイントを教えてください。

山田先生

「これで認知症が予防できる」などと謳った派手な情報に飛びつくのではなく、運動、血圧・糖代謝・脂質の管理、難聴対策、頭部外傷の予防、そして社会参加による孤立の回避といった、再現性の高い対策を積み上げることが現実的です。

血液検査が拓く「発症前」へのアプローチ。治療から予防へ、認知症対策の転換

堀江氏

血液検査でアルツハイマー病の兆候が分かるようになってきたという話は非常にインパクトがありますよね。一方で個人的には「このような技術が確立されるまで、なぜこれほど時間がかかったのか」とも感じるのですが、技術的には何が大きく変わったのでしょうか。

山田先生

最大の要因は血液検査の精度向上です。血液中には非常に多くのタンパク質が含まれているため、以前はアルツハイマー病と関係の深いPタウの安定的かつ正確な測定が難しい状況でした。しかし近年、特定のタンパク質だけを高精度で検出できる技術が進歩したことから、実用化の段階に入ったと考えられています。

堀江氏

発症までに20〜30年のタイムラグがある、という話を聞くと、正直かなり怖いですよね。一方で、血液検査があるなら、まだ症状はないけれど将来認知症の発症リスクが高い人を見つけられるのではないかとも思います。実際に、発症前の患者さんはすでに確認されているのでしょうか。

山田先生

認知症の症状はないものの血液検査でPタウが高い方を対象に、経過観察を行った研究ではすでに確認されています。さらに近年Pタウは、神経障害や認知機能低下を比較的正確に予測しやすい指標であることも示されてきており、早期介入を考えるうえで重要な手がかりになりつつあります。

堀江氏

最近はアルツハイマー病の治療薬も話題になりますが「思ったほど効果が感じられない」という声も耳にします。個人的には「そもそも使うタイミングが遅すぎるのでは」と感じるのですが、この点はいかがでしょうか。

山田先生

非常に重要な視点だと思います。現在の治療薬は主にアミロイドを標的にしていますが、最近の研究でアミロイドの蓄積量と神経障害は必ずしも強く相関しないことが分かってきました。一方で、Pタウは神経変性や認知機能低下とより関連が深い可能性が示唆されています。
加えて、治療開始時点ではすでに脳の萎縮がかなり進行しているケースが多く、タイミングの問題も効きにくさの一因だと考えられます。

堀江氏

そのように考えると、症状が表れてから高額な薬を使うよりも、もっと早い段階で運動や生活習慣の改善に取り組んだほうが現実的で、コストパフォーマンスも高いように感じます。

山田先生

血液検査によって比較的負担の少ない形でアルツハイマー病の兆候を捉えられるようになれば、運動や生活習慣の見直し、既存薬の活用といった介入を、より早い段階で検討できるようになります。これこそが現在注目されている「予防医療としての認知症対策」です。

堀江氏

一方で、世の中には「認知症予防」という言葉のもとに、科学的根拠が定かではないサプリメントや情報が多く出回っているのも事実ですよね。個人的には一番の問題だと感じています。

山田先生

だからこそ、科学的根拠が積み重なってきた生活習慣や医療介入という側面にきちんと光を当てる必要があります。血液検査の進歩は診断を楽にするだけでなく「本当に意味のある予防とは何なのか」を見極めるための基盤にもなります。正しい情報を伝えていくことが重要だと考えています。

配信元: Medical DOC

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