
奇跡のコレクション19点、全作公開
ポーラ美術館が所蔵するモネの油彩画は19点。日本はもとよりアジアでも随一の規模と質を誇るこのコレクションが、本展ではすべて一挙公開されます。
1870年代のセーヌ河沿いの風景から、旅先のノルマンディーやヴェネツィア、そして晩年の「睡蓮」連作まで、モネの画業の変遷をまるごと体感できる機会はなかなかありません。《睡蓮の池》(1899年)、《ルーアン大聖堂》(1892年)、《セーヌ河の日没、冬》(1880年)など、教科書でも知られる名品が箱根の森の中で一堂に会します。
100年を超えた「対話」が始まる
アローラ&カルサディーラ《Graft》2021年、《Penumbra》2020年、展示風景:「Antille」ギャラリー・シャンタル・クルーセル、パリ、2022年、 撮影:Martin Argyroglo
本展の最大の見どころは、モネの絵画と、国内外18組の現代作家たちの作品が「創造的な対話」として並ぶ点です。美術史的な比較展示ではなく、まるで時代を超えたアーティスト同士が会話するように作品が配置されます。
モネ《睡蓮の池》× ノエミ・グダル
クロード・モネ《睡蓮の池》1899年、ポーラ美術館
ノエミ・グダル、展示風景:「And yet it still moves」エーデル・アサンティ、ロンドン、2025年、撮影:Tom Carter ©Noémie Goudal Courtesy of the artist and Edel Assanti
モネが自ら設計したジヴェルニーの庭=人工の楽園を題材にした名作と、3億年前の植生をジオラマで再現したフランス人作家グダルの「デルタ」シリーズが対峙します。どちらも「人工の風景」を主題にしながら、向かう先はまるで異なります。モネは自然美の再構築へ、グダルは知覚の不確かさへと。
モネ《セーヌ河の日没、冬》× フェリックス・ゴンザレス=トレス
クロード・モネ《セーヌ河の日没、冬》1880年、ポーラ美術館

最愛の妻カミーユを失ったモネが描いた冬の河、その静謐な喪失感に呼応するのが、亡き恋人の体重と同量のキャンディを積み上げたゴンザレス=トレスのインスタレーションです。青いキャンディを流れる氷塊に、電球を沈む夕陽に見立てるという展示構成は、詩的で胸に迫ります。
モネ《花咲く堤、アルジャントゥイユ》× タオ・グエン・ファン
ー フェリックス・ゴンザレス=トレス《「無題」(マルセル・ブリアンの肖像)》1992年、ポーラ美術館
クロード・モネ《花咲く堤、アルジャントゥイユ》1877年、ポーラ美術館
タオ・グエン・ファン《Becoming Alluvium》2019年、Produced by the Han Nefkens Foundation Courtesy of the artist
産業化するセーヌ河沿いの風景を描いたモネの絵画に、ベトナムのダム決壊事故と生態系破壊を詩的に描くタオ・グエン・ファンの映像が向き合います。自然と文明の衝突という普遍的なテーマが、100年の時を超えて浮かび上がります。
モネ《ルーアン大聖堂》× スーメイ・ツェ
クロード・モネ《ルーアン大聖堂》1892年、ポーラ美術館
スーメイ・ツェ《Gewisse Rahmenbedingungen 3 (Altes Museum,Villa Farnesina, Villa Adriana)》(部分)2015-2017年 ©sumeitse
光の変化によって刻々と表情を変える大聖堂を描き続けたモネの連作。同じ主題を異なる時間・天候のもとで繰り返し見つめたモネの「まなざし」に共鳴するのが、ルクセンブルク出身のスーメイ・ツェです。彼女の映像作品では、ジャグラーの手の上で転がるガラスの球体に壮麗な建築が映し出され、反転・回転するたびに像が組み替えられていきます。固定された視点などない、という問いかけは、見るたびに異なる光を捉えたモネの姿勢と深く響き合います。
