■一流企業を辞め、「職業あきとんとん」へ
大学時代、あきとんとんさんは学習塾で講師のアルバイトを始めます。
そこで出会ったのが、「勉強する意欲はあるのに、家庭の事情や金銭的な理由で授業数を増やせない生徒」でした。
「もっと他の授業も受けたいのに、家庭の事情や授業料の関係でコマ数を増やせない子は少なくありませんでした。それで、『じゃあYouTubeに授業動画をあげるから、それを見てみてよ』みたいな感じで、勉強系動画を作り始めました」
YouTubeを始めたきっかけは、「有名になりたい」「稼ぎたい」といった動機ではなく、ただ目の前の生徒の「やる気」を、できる限り生かしてあげたい。その思いだけでした。
大学を卒業して京都大学大学院へ進み、大学院修了後は、楽天グループ株式会社に就職。塾講師のバイトはすでに辞めていましたが、社会人として働きながらも、YouTubeでの発信は継続していました。
学業、仕事、発信活動を並行する生活は決して楽ではありませんでしたが、「自分の授業で助かる人がいる」という実感が、続ける支えになっていました。
転機となったのは、書籍の刊行が重なり、活動の幅が一気に広がったこと。
動画制作と執筆の両立の中で、時間の限界を感じるようになります。
そして2022年に退職。「職業あきとんとん」として、教育クリエイター1本で活動する道を選びました。
■「自分だったらここ分からないな」を起点にした授業

あきとんとんさんの授業づくりの根底にあるのは、高校時代に味わった「分からなくなった側」の経験です。
「単純に、高校生の時に本当につまずきまくっていたので、勉強が苦手とか、勉強が嫌いっていう人たちの気持ちが、すごく分かるようになったんです。だから、授業をする時は、その当時の自分を生徒だと思ってやっています。『自分だったら、ここ分からないな』っていうポイントを、めちゃくちゃ盛り込んでいる感じですね」
動画では「楽しく授業をすること」を、特に強く意識しています。
「受け手側、生徒の立場で考えた時に、先生自身が楽しそうに勉強と触れ合っていないのに、『勉強って楽しいんだよ』って言われても、あまり説得力がないと思うんです。でも、大人が楽しそうにしている姿を見ると、子どもって『あ、それって楽しいんだ』って自然に感じるんですよね」
そのうえで、「やらされる勉強は、やっぱり楽しくないんですよね。逆に、自分で興味を持って始めるものは、やっぱり楽しい」と、あきとんとんさん。
たとえば最近、韓国人の友人と話したくて韓国語を勉強しているそうですが、そういう「自分から勉強するもの」は、すごく楽しい。けれど、もし大学の授業で必修だからという理由で韓国語の授業を受けても、あまり楽しいと思えなかったかもしれない、と分析しました。
「結局、知りたい知識を自分で得られる感覚があるかどうかが、大事なんだと思います」
