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自然薯、しょうゆご飯、ミルク粥から「嫌だった思い出ごはん」まで。記憶に残る味を語りつくす。|井澤由美子,わたなべぽん

自然薯、しょうゆご飯、ミルク粥から「嫌だった思い出ごはん」まで。記憶に残る味を語りつくす。|井澤由美子,わたなべぽん

料理上手の祖母が作ってくれた素朴ごはん
祖父のお手製自然薯

―井澤さんの「思い出ごはん」話もお聞きしたいです。

井澤 私の実家は祖父母の家と同じ敷地内にあって、お庭が繋がっていたんです。ですから、幼稚園から帰ってくると真っ先に祖母の家へ直行していました。祖母が漬けたぬか床に手を突っ込んでグルグル探し「これがちょうど食べごろだな」と見極めて、きゅうりやカブを出し、軽く糠をぬぐってそのまま食べてました。塩梅の良い乳酸菌の塊は、花のような良い香りがするんです。それから「しょうゆご飯」も思い出深いですね。おしょうゆだけで炊き上げるシンプルなご飯なのですが、料理上手な祖母は「おしょうゆが入っているだけだよ」なんて照れながら出してくれて。私はその祖母の表情を見るのがとても好きでした。お庭で採れた栗を使った栗ご飯や、庭の梅で作る赤い梅干しもよく覚えています。

一方で祖母はとてもハイカラな人でもあって、冷蔵庫は重たい扉のアメリカ製だったし、カリッと焼いたイギリスパンにバターをたっぷり塗っていただくような面もありました。浅草っ子の美大出身ということもあり、粋な器選びや、盛り付けの色彩感覚も豊か。本当に様々な影響を受けましたね。現在の私の「旬の食材を日々取り入れて、美味しく健やかな料理を作る」というスタンスは、まさに祖母の暮らしの美学から受け継いだものだと感じています。

―庭といえば、ぽんさんのご実家もすごいですよね。

ぽん 周囲を田んぼに囲まれているからか、とにかくアマガエルだらけの庭でした(笑)。

井澤 私もアマガエルって可愛らしくて大好きです。

ぽん 夜になると家屋の灯りに誘われて小さな羽虫が集まってくるんですが、それを食べようとアマガエルたちがいっせいにガラス窓に張り付くんです。多いと1枚のサッシに20匹くらい。ジーッと虫の様子を窺って、近くにきたらバクッと食べちゃう。口にはいらないほど大きな虫を食べちゃったときには、目を白黒させて器用に手を使って口に押し込んだりして、見てるとかわいいんです。

井澤 そんなふうに張り付いていても、落っこちないんですね。

ぽん 器用にひっついて落っこちないんですよね 。あと庭といえば祖父が「うちの庭で自然薯を作って楽して収穫したい」と言い出した事があって。当事わが家は兼業農家だったので肥料袋がたくさんあったんですが、まずその袋の上下を切って筒状にするんです。それを2~3袋縦に重ねて土を入れれば、高さのある植木鉢になるんですよ。祖父はそこに山で採ってきた自然薯の新芽を植えてました。秋になったら肥料袋をナイフでスーッと切って土をほぐせば楽に収穫できるわけです。思いついた祖父はとても誇らしげでした(笑)。

井澤 自然薯は薬膳の世界では「山薬(さんやく)」と書いて、まさに「山の薬」と呼ばれているんです。とても滋養強壮に優れた、贅沢でパワーのある食材なんですよ。それをお庭で栽培されるなんて、おじいさま、素晴らしいアイデアマンですね!

ぽん アイデアマンでしたし、思いついたことなんでもやってみたい人でしたね。おじいちゃんの畑の収穫や、田植えや稲刈り、当時私もよくお手伝いしました。

井澤 自然と触れ合いながら命をいただく、最高の食育ですね。

ぽん そうですね、今思うとありがたいことです。でも、今ならあの風景をとても懐かしく思い返せるんですけど、子供だった当時はお手伝いより友達と遊びに行きたくて仕方なかったなぁ(笑)。

体調が悪い時の定番になった「思い出のミルク粥」

―お二人は、大人になってからのご自身の「思い出ごはん」はありますか?

井澤 私はもともと料理家を目指していたわけではないのですが、小学生の頃からお料理を作るのが大好きで。よく女の子たちとそれぞれの家に集まっては、一緒にお菓子やごはんを作っていたんです。今思えば、小さな料理教室のようなことをやっていたのかもしれませんね。そのうち自然と「味付けは由美子の担当ね」という流れになって。みんな少し味付けに自信がなかったからか、私に任せてくれていたんです。

その後、大学を卒業する頃に、母から「そんなに食いしん坊なら、自分でお店でもやってみたら?」と言われまして。冗談かと思っていたら、なんと1週間後には母が本当に店舗の物件を見つけてきてしまったんです(笑)。そこでお店を開くことになり、一応決まったメニューはあったのですが、そのうちにお客さまのその日の体調に合わせて、リクエストされたお料理をお出しするようになっていきました。

ぽん すごい行動力! そんなお店が近所にあったら通いたくなっちゃいますね。

井澤 それがきっかけで本格的に食のお仕事に携わるようになり、後に「マーサ・スチュアート」の日本版雑誌の編集部でも働くことになりました。当時は編集部やお店、子育てで、1日に2時間ほどしか眠れないような日々でしたね。ですから、毎日パーフェクトなご飯を作れないこともたくさんありました。それでも「お味噌汁だけは」と毎日欠かさず作っていたのですが、忙しさでなぜか3日間ほどネギを買い忘れてしまって。

その後、ようやくネギを入れたお味噌汁を出した時、小学生だった娘が「あー、やっぱりネギが入っているお味噌汁って美味しいなぁ」としみじみ言ったんです。その違いが分かる子どもに育ってくれたことが嬉しくて、思わずくるっと後ろを向いてホロリと涙が出てしまったくらい。真っ直ぐに育ってくれている証みたいな勝手な感覚に浸りました。ぽんさんはありますか? ご主人から「きみのこれが美味しい!」と言われて嬉しかった思い出のごはん。

ぽん んー …… ちょっと照れちゃうんですけど、結婚する前、あるとき夫が風邪を引いて寝込んでると連絡があって。「なにか食べた?」と聞いたら「食欲はあるんだけど家に何もないし、買いに出かける気力がない」と言うので、お粥を作りに行ったことがあるんです。そこで食欲があるなら普通のお粥より食べ応えのあるリゾット風にしてあげようと思って、刻んだ玉ねぎやベーコンを炒めて牛乳で煮込んだミルク粥にしたんですよ。一口食べてただのお粥じゃないと分かった瞬間の夫の「んーーーーー!!」って顔が今でも忘れられない(笑)。

井澤 あはは(笑)。心温まる、とってもいいお話ですね。

ぽん そう、だから今でも時々、具合が悪くなると夫は「ミルク粥食べたい」って言うんですよ。

井澤 弱っている時に思い出すのがそのミルク粥だなんて、とっても素敵。

配信元: 幻冬舎plus

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