インターネット時代のがん情報発信――医療者のSNS活用と社会に求められる「正しい情報の処方箋」

インターネット時代のがん情報発信――医療者のSNS活用と社会に求められる「正しい情報の処方箋」

自分や家族ががんと診断された、あるいは疑わしい症状があったとき、まずはインターネットで調べてみるという人も多いのではないでしょうか。しかし、ネット上には科学的根拠に乏しい誤情報が多数混在しており、命に関わる治療の選択を誤る患者さんが後を絶ちません。正しい医療知識を、必要とする人に、適切なタイミングで届けるために、医療界はどう動くべきでしょうか。横浜市で2026年3月に開催された第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO 2026)のセッション「がん情報、誰にどう届ける? 〜多職種・多施設・多団体をつなぐコミュニケーション〜」に登壇した専門家たちの議論から、SNS活用の現在地と、次世代を見据えた情報発信のあり方を探ります。


「不正確な情報で治療機会喪失」への憤り

「抗がん剤治療を受ければ長く生きられる可能性があった肝臓がんの患者さんが、ネットで見つけた『がんが消える』とうたう“奇跡の水”に頼り、治療からドロップアウトしてしまいました。同じような人がかなり多いことがわかり、非常にショックを受けました」。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報の発信を続けている、京都大学医学部附属病院消化管外科の山本健人氏は、自らの情報発信の原点として、専攻医時代の苦い経験を振り返りました。「外科医としてどれだけ腕を磨いても、病院に来ない人、来なくなってしまった人を救う手立てはありません」――不正確な情報によって多くの人が標準治療を受ける機会を失ったことに、山本氏は憤りを覚えるといいます。

山本健人氏

インターネット空間にも現実の空間にも、悪質な情報が蔓延しています。効果の根拠がないサプリメントや、検索のキーワードを巧みに悪用した不適切な広告、そして書店に平積みされる真偽不明の健康本のように、病気に悩む人を惑わす数々の情報が存在します。山本氏が紹介したSNS上のがん情報についての研究によると、X(旧Twitter)におけるがん関連の投稿のうち、「いいね」の数が多かった上位100件の44%が誤情報だったというのです。

オンラインでのがん情報入手の困難さ

産学官民医(産業界・学界・行政・市民・医療従事者)が連携してがんの社会課題解決に取り組む団体「CancerX」の扇屋りん氏はがん情報に関する課題として、「がん情報の均てん化を目指す会」の報告を紹介しました。同会が約1000人を対象に実施したアンケートで、45%の人がオンラインでのがん関連情報の入手に困難を感じていたとする結果から、オンライン上の情報を入手・活用する際の三つの課題が提示されたといいます。

・情報が分散している、専門用語が多いなど「情報源」に関する課題
・自分に合った情報が見つけられないといった「情報へのリーチ」に関する課題
・どの情報を信用してよいかわからない、情報が自分に合っているのかわからない、といった「情報の活用」に関する課題

これらの課題に対し「がんと言われて先が見えず、動揺してしまう人を減らすためにも、適切なタイミングで必要な情報にたどり着ける仕組みが必要」と扇屋氏は訴えます。

扇屋りん氏

配信元: Medical DOC

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