JSMOのSNSへの取り組みと今度の課題
日本臨床腫瘍学会(JSMO)は国内の学会としては珍しく、学術集会でのスライド撮影やSNS投稿を広範囲に解禁しています。滋賀県立総合病院腫瘍内科/日本臨床腫瘍学会広報渉外委員会委員の後藤知之氏は、「海外の学会では、スライドを撮影してSNSで共有することが学会自体のブランディングや最新情報の迅速な拡散につながっています」と説明し、JSMOでもSNSワーキンググループを立ち上げ、利用の5原則を定めるなどの環境整備を進めてきたことを紹介しました。
後藤知之氏
しかし、課題も残ります。後藤氏によると、現状のSNS発信は専門家同士のコミュニケーションやプロ向けの情報発信に特化しすぎており、一般市民や患者さんが蚊帳の外に置かれているといいます。「我々専門家は確かなエビデンスを知っていますが、当事者がいない診察室の中だけで完結していてよいのでしょうか」と後藤氏は危機感を示します。これまで中心としてきたXでの活動に加えて、他領域の学会のようなYouTubeやInstagramの活用、インフルエンサーとのコラボレーションなどの親しみやすいアプローチが今後の課題として挙げられました。
個人発信の限界と、打開のための「連携」
一般向けの発信にいち早く取り組んできた山本氏は、個人の情熱に頼る活動の限界について言及しました。山本氏はSNSや書籍で正しい情報を発信し続けたことで、時にはいわれのない誹謗中傷や激しい批判にさらされた経験を明かしました。「後進の医師たちに同じ活動を勧められるかと考えたとき、個人が矢面に立つ形では持続性がありません」と山本氏は語ります。
そこで重要になるのが、大きな組織との連携です。山本氏は横浜市と連携協定を結び、市民講座を2026年1月に開催しました。市の予算や広報インフラ(LINEや広報誌など)を活用したことで、普段のSNS活動だけでは集まらない高齢者層などにも声が届くようになったといいます。
扇屋氏が所属するCancerXも、組織や立場の壁を越えた連携(コレクティブインパクト)の実現を目指して取り組みを進めています。一例として多職種や一般企業の人たちなどの多様なメンバーによるワークショップを通じ、診断から治療、緩和ケアまでの道のりに沿って公的な信頼できる情報へのリンクを集約した「防がんMAP」を作成しました。複雑に散らばった情報への「水先案内人」となるプラットフォームを、さまざまな背景を持つ人たちの手によって作りだすことは、CancerXが考える「がん当事者や家族が必要なとき、必要な情報にアクセスできる」という理想像を体現する一つの形といえるでしょう。

