●救われた人は「氷山の一角」
取材をしながら実感するのは、無実をうったえながらも、支援者も弁護人も見つからず、孤独のなかで諦めていく人たちが確かに存在することだ。
執行猶予付きの有罪とされた人や、すでに服役を終えた人の中にも、無実を訴える声は多い。だが、家族の反対や社会的な目を恐れ、再審請求に踏み出せずに泣き寝入りしているケースも少なくない。
袴田さんの再審無罪も、長年支え続けた家族や支援者の存在なくしては語れない。光が当たり、濡れ衣を晴らせた人たちは、氷山の一角にすぎない。
たとえ超党派議連の改正案が成立したとしても、冤罪を主張する側が圧倒的に不利な立場から出発せざるを得ない現実は、簡単には変わらない。

●見失ってはいけない「本当のゴール」
だからこそ、再審法改正は「法務省の敷いたレール」の上だけで進めてはいけない。
今のまま法務省案を通せば、冤罪被害者の救済にはつながらない。それどころか、「改正した」という既成事実だけが残り、問題の本質は温存される。権力による「アリバイ作り」に加担することになる。
本来の目的は、ただ一つ。無実の人を、一刻も早く、一人でも多く救うこと。
議論の入り口で起きている駆け引きや部分的な譲歩に目を奪われ、本当のゴールを見失ってはいけない。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

