●このような運用が「あるべき姿」なのか
上のような運用は、立花氏に限ったことではなく、刑事裁判では「あるある」とすらいえます。
ただ、そのような運用が「あるべき姿」なのかは疑問です。
たとえば本件で、4号の罪証隠滅や5号の被害者などの畏怖をさせるような「相当な理由」が本当に認められるのかは、慎重に判断すべきだと思います。
4号や5号の「相当な理由」(おそれ)は、抽象的なものでは足りず、具体的・現実的なものである必要があるとされています。
本件の場合であれば、逮捕・勾留前に攻撃的な言動を繰り返してきたことから、保釈後に同様の言動を行うかもしれないと考えることは、「具体的・現実的なおそれ」があるといえるでしょうか。
個人的には、もし「逮捕・勾留前に攻撃的な言動を繰り返していた」という事情だけだったとすれば、抽象的なおそれに過ぎないのではないかと思います。その理由は大きく2つあります。
まず、身柄拘束が実際に行われたことで、それまでとは状況が大きく異なっています。保釈後に被害者を畏怖させる言動などを行えば、保釈が取り消されるおそれがあります(刑訴法96条1項4号)。
SNSなどで攻撃的な言動を行えば、保釈の取り消し事由があることはすぐに明らかになります。そうなればすぐに再び身柄拘束されてしまうのです。
これまでSNSなどで攻撃的な言動を行っていたからといって、保釈後もそのような言動を行う「具体的・現実的なおそれ」があるとはいえないのではないでしょうか。
次に、そもそも今回の起訴事実は、SNSや演説などで行った発言による名誉毀損です。
被害者を中傷するような発言を行ったことを根拠として名誉毀損罪で逮捕・勾留されている者について、そのような発言を行っていたことが5号にあたるとして保釈請求を認めないのであれば、極端な話、名誉毀損罪で逮捕・勾留されている者については常に5号のおそれが認められ、権利保釈が認められないということになりかねません。
同様のことは、脅迫罪や恐喝罪などについてもあてはまるでしょう。
もちろん、逮捕・起訴される原因となったもの以外の発言も含めて4号や5号の該当性が検討されるはずではあります。立花氏のこれまでの言動の攻撃性だけでなく、身柄解放した場合に、実際に証拠を隠滅・ねつ造したり、被害者らを畏怖させるような言動を行う具体的なおそれが認められるのかどうかについては、慎重な判断が求められると思います。
●「逃げそうだから保釈できない」は正しいか
89条の除外事由6つに「逃亡のおそれ」は含まれていません。逃亡のリスクは保釈金で担保するのが制度の原則です。
なお、保釈後に実際に逃亡するおそれが認められる場合には、これも保釈の取り消し事由となります(刑訴法96条1項2号)

