●母親は知らなかった…部屋から見つかった大量の酒
情状証人として、同居する母親も証言台に立った。高齢で、柔らかな雰囲気の女性だった。ここ4〜5年は、親子の会話が減っていたという。
理由を問われると、母親はこう語った。
「何か言うと何倍も言い返してくる」、「理屈っぽく言ってくる」
その証言を聞く被告人は、無表情のまま。ときおり法廷の天井付近をぼんやり見つめていた。
母親は被告人が酒を飲んでいるとは知らなかったそうで、逮捕後、部屋から大量の酒が見つかり、大きなショックを受けたという。
それでも母親は、パートの合間を縫って、片道1時間以上かけて拘置先へと何度も面会に通った。再犯を防ぎたい、酒への向き合い方も変えてほしい──。そんな思いからだった。
証言の途中では、感情をあらわにする場面もあった。
「ぐちゃぐちゃ言われたら私も言います!何か投げられたら、私も投げます!」
法廷では、再犯防止策として「治療」や「監督体制」の話になることが多い。だが、この日は、母親として、どうにか息子を立て直したいという感情が表れていた。
この母の思いは、被告人に届いていたのだろうか。
●「飲酒運転がバレなければいい」
一方、被告人自身は、事件当日の記憶がほとんどないという。
家を出る際の状態についても「飲んでいないはず」と答えるにとどまり、その後に酒を飲んで運転を始めたことも、事故時にどのような運転をしていたかに関しても覚えていないと話した。
なぜ2回に分けて大量の酒を買ったのかと問われても、返ってきたのはこんな答えだった。
「月20回くらい買ってるんで、その2回を思い出せと言われても」
正直に供述しているのかもしれないが、どこか“自分のことではない”ようにも聞こえる。
事故後に酒を飲んだ理由については「飲酒運転がバレなければいい」と説明。そのうえで「(事故現場から家まで)歩いて帰れる距離だからというのもある」という趣旨の話もした。

