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挿絵で読み解く『いばら姫』—2つの童話と古代の文化が織りなす神秘的な世界

いばら姫への不吉な予言…だれにも呪いが解けなかったのはなぜ?

06_WalterCrane,_The_sleeping_beauty-04ウォルター・クレインの『眠り姫』。城の人々や植物までもが深い眠りに落ちている様子。, Public domain, via Wikimedia Commons.

ペロー版とグリム版に共通するもうひとつの場面が、いばら姫に告げられる不吉な予言です。
グリム版では、賢女たちが、美貌や豊かな富などの贈り物を授けていたその時、パーティに招かれなかった13番目の賢女が現れます。そして、「この子は15歳になったら、つむを指にさして死ぬであろう」(※6)と予言します。

その後、まだ贈り物をしていなかった賢女が呪いを弱め、死ではなく、100年の眠りにつくように変えました。

では、なぜ13番目の賢女の力だけは、だれにも打ち消せなかったのでしょうか。

ドイツ文学者の高橋義人(たかはし・よしと)氏によると、12が1年間の月数や1ダースを表すように、ひとつの単位であるのに対して、13ははみ出た数字です。高橋氏は、「つまりこの13番目の賢女は他の12人の上に立ち、彼らを統括する役を担っていたと考えられる」(※7)と述べています。

いばら姫に呪いをかけた賢女は、特別に強い魔力を持っていたため、人の生死をも司る存在だったと読み解けます。

村人の暮らしを支える役目を担っていた賢女ですが、人間の身体や薬草に関する知識が豊富で、魔術的な力を備えているとも信じられていました。そのため、人々にとっては、尊敬する人物であると同時に、恐れの対象でもあったのでしょう。

後世のグリム童話では、13番目の賢女がしだいに「魔女」として描かれるようになりますが、そこには、こうした人々の畏怖が受け継がれているのかもしれません。

このように、『いばら姫』の登場人物に注目すると、生と死の境目にふれる王女を中心に、古代ゲルマンの文化が息づいていることを感じられるでしょう。

(※6)小澤俊夫監訳『語るためのグリム童話③ 白雪姫』小峰書店、2007年、p.8

(※7)引用:高橋義人『グリム童話の世界—ヨーロッパ文化の深層へ』岩波書店、2010年、p.95

『いばら姫』の登場人物から見えてくる神秘的な表現

この記事では、多くの画家が手がけた『いばら姫』の挿絵のなかから、エドマンド・デュラックとウォルター・クレインの作品をピックアップし、童話の世界をたどりました。

挿絵を読み解いてみると、グリム版とペロー版の両方を思わせる表現があると分かります。
さらに、物語の背景にある古い信仰に目を向けると、『いばら姫』はロマンティックなだけでなく、神秘的で奥深い物語として見えてきます。

挿絵を入り口に、『いばら姫』の新たな魅力を楽しんでみてくださいね。

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◆参考文献

小澤俊夫監訳『語るためのグリム童話③ 白雪姫』小峰書店、2007年
鈴木晶『グリム童話 メルヘンの深層』講談社、1991年
高橋義人『グリム童話の世界—ヨーロッパ文化の深層へ』岩波書店、2010年
平松洋監修『挿絵画家 エドマンド・デュラックの世界』KADOKAWA、2014年
正置友子、今井良朗、田中竜也、占部敏子、山根佳奈『絵本はここから始まった ウォルター・クレインの本の仕事』青幻舎、2017年
マリア・タタール著、鈴木晶、高野真智子、山根玲子、吉岡千恵子訳『グリム童話 その隠されたメッセージ』新曜社、1992年

◆参考サイト
Gakken×朝日新聞 キッズネット「*ゲルマンじん【ゲルマン人】」
https://kids.gakken.co.jp/jiten/dictionary02400225/

ベネッセ教育情報 世界史 定期テスト対策「【ヨーロッパ世界の形成】ゲルマン人とブルガール人とマジャール人の違いについて」(Benesse)
https://benesse.jp/kyouiku/teikitest/kou/social/world_history/k00445.html

配信元: イロハニアート

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