治療の進歩で新たな問題も―小児・AYA世代のがんサバイバーが直面する「三つの壁」と解決策

治療の進歩で新たな問題も―小児・AYA世代のがんサバイバーが直面する「三つの壁」と解決策

「晩期合併症」と長期的な健康管理の重要性

長期生存が可能になるにつれ、「晩期合併症」と呼ばれる、がん治療の影響で後から生じる健康問題が重要になってきます。米国の大規模調査によれば、15歳未満でがんにかかった人が30代から50代になった時、健康なきょうだいと比べて内分泌系の疾患や、脳腫瘍などの神経系の問題、そして心血管疾患(循環器の病気)などのリスクが高いことが分かっています。
AYA世代においても、小児がんほどの多様性や複雑さはないものの、感染症や腎疾患、心血管疾患、さらには自殺・自傷や周産期合併症などのリスクが上がることが報告されています。メンタルヘルスや、妊孕性温存後の安全な出産に向けた健康管理も重要です。治療後のライフスタイルもその後の健康に影響します。1970~99年の間に北米で治療を受けた3万人の小児がんサバイバーのデータでは、アルコールや身体活動、体重管理といったライフスタイルが「ヘルシー」な人は心臓や呼吸器などの晩期合併症リスクが低く、「アンヘルシー」な人はリスクが高くなることが示されました。いかに長期的な健康管理が重要であるかが分かるかと思います。

整備が進まない小児医療から成人医療への「移行」

長期的な健康管理で直面するのが、小児科と成人診療科のシステムの違いです。小児科では医師が全人的に何でも診てくれて、チーム医療も完結しやすく、医療の同意も保護者が行います。しかし、成人の医療は「消化器内科」「呼吸器外科」のように臓器・疾患別に専門分化されており、原則として治療方針については患者さん本人の同意と、自身の健康管理に対する主体的な参加が求められます。小児期から成人期へ移る際、患者さん自身がヘルスリテラシーを獲得し、家族中心から患者中心へと医療システムを移行していく包括的なプロセスを「トランジション(移行)」と呼びます。

日本小児科学会も成人移行支援を推進する提言を出していますが、移行支援の仕組みはまだできていません。これは日本だけの問題ではなく、米国の調査でもすべてのプロセスを満たしている施設はゼロであるなど、世界的に見ても成人の医療現場において包括的な移行プログラムを提供できる施設の整備が追いついていない状況です。

私たちが国立国際医療センターで試みているのが、成人診療の中に設けた「移行支援外来プログラム」です。小児科から成人医療へ移る際、最初の受診で総合診療科の医師やAYA世代支援の多職種チームが関わり、「移行ポリシー」というパンフレットを渡して、成人医療の仕組みや地域連携の必要性などを分かりやすく説明します。さらに、小児科の先生方と合同カンファレンスを開き、どのような晩期合併症のリスクがあるのか情報を共有した上で、誰が何をやるかを明確にした「健康管理計画書」を作成し渡しています。

実際に移行してきた患者さんを診て驚かされるのは、若くても骨密度が著しく低下しているなど高齢者以上にたくさんの病気を抱えていたり、成長の過程でさまざまな大変な思いをしてきた事実です。このプログラムに参加した患者さんからは「自分の病気や体調を改めて考える機会になった」「相談してよかった」という声をもらっています。

配信元: Medical DOC

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