●「熟練者以外が登りにくい仕組み」を
──「熟練者」とは、どう判断するのでしょうか。
行政がそれを判断するのは無理だと思います。
現在のガイドラインでは、閉山中は「万全な準備をしない登山者の登山は禁止する」とされています。
以前は「熟練者以外は登れない」という表現がありましたが、「誰が熟練者を判断するのか」という批判があり、現在の表現になりました。
ただ、「万全な準備」という言葉もかなり曖昧です。
──では、どうすればいいのでしょうか。
規制を強めるより、「熟練者以外が登りにくいシステム」を作るべきだと思います。たとえば、有料道路を閉鎖すれば、雪のある時期に1合目から登る人は、ほぼ熟練者だけになります。
なお、外国では「事故防止」を理由に全面的な入山禁止にするケースは、ほとんどなく、多くの国で環境保護のために規制をしています。環境保護のために登山者数の制限や許可制にしています。
入山者数を制限すれば、結果的に事故も減る。
富士山のような山では、1日の入山者数を数百人程度にするのが、世界の環境保護の一般的な考え方だと思います。
今すぐにそれをするのは無理なので、今後、30年くらいかけて、富士山の入山者数を少しずつ減らしていくことが現実的だと思います。
●「自己責任」と「救助有料化」は別問題
──「自己責任」なら、救助費用も自己負担にすべきだという声があります。
登山の自己責任と救助費用の有料化は別の問題です。登山が自己責任である点は万国共通ですが、救助費用の有料化をする国もあれば、しない国もあります。
スイスでは、全土で救急車と救急ヘリは有料ですが(民間保険で賄われています)、救急車は有料でも、公的な山岳救助活動は無料の国があります。
日本では、山や川、海、街中を問わず、埼玉県の防災ヘリを除き、公的な救助活動は無料です。
──山岳事故だけ有料化することはできないのでしょうか。
簡単ではありません。
救助ヘリには、警察ヘリ、都道府県の防災ヘリ、消防ヘリなどがあります。山と山麓、川の地域区分が困難であり、自然災害と山岳事故の区別も困難な場合があります。
地震、火山噴火、落石、雪崩、山の崩壊などによる事故は、山岳事故であると同時に自然災害の性格があり、これらのうち規模の大きな事故が自然災害に分類される傾向があります。登山、登山者、山岳事故、山岳救助活動を法律で定義することが難しいのです。
結局、山岳救助活動を有料化するのであれば、山、川、海、街中を問わず「全部有料」にすることになりそうです。その場合でも、警察活動の有料化は、かなり難しいと思います。

