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なぜ『ラス・メニーナス』は不思議なの?──見ているのに、見られている名画

見えない、隠れた設計に気付く

ベラスケスが絵の中に仕込んだ「まなざしの設計」は、私たちの日常生活にもひそんでいます。

たとえば、おしゃれな雑貨店に入ったとき。私たちは店内を自由に歩き、好きな商品を手に取り、自分の意思で選んでいるように感じます。

しかし店内の動線は、あらかじめ細かく考えられて設計されています。

入口で目に入りやすい棚、奥へ進みたくなる通路、レジ前に置かれた小物。照明の明るさや棚の高さ、商品の並べ方まで、さりげなく私たちの視線と足を導いているのです。

誰かに命令されているわけではないけど、気付かないうちに、見る場所やたどる順番を誘導されている。

こうした「見えない設計」は、学校や職場、病院など至るところにあります。

私たちは自由に見て、自由に選んでいるつもりだけど、その背後にある空間の設計によって行動だけでなく考え方まで静かに方向づけられているのです。

フーコーが注目したのは、まさにそうした空間の中で働く見えない力でした。

『ラス・メニーナス』でベラスケスが試みたことは、この「見えない設計」を絵画を通じて、目に見える形にすることだったのかもしれません。

雑貨店の棚や照明、商品の配置は、客が自由に見ているようでいて、視線や動きを自然に導いている。(イメージ)雑貨店の棚や照明、商品の配置は、客が自由に見ているようでいて、視線や動きを自然に導いている。(イメージ)

見ているのか、見られているのか

フーコーを参考にしながら『ラス・メニーナス』を見ると、少しだけ日常の風景が変わって見えることがあります。

お店に入ったときに「この空間は自分をどこに歩かせようとしているんだろう」と、考えてみる。

何気なくSNSを眺めているとき「発信者は私に何を見せようとしているんだろう」と、ちょっと立ち止まってみる。

「見ている側」だと思っていた自分が、実際は「見られている側」でもあったと気付く。ちょっと落ち着かない感覚ですが、今まで見えなかったものが、見えてくる面白さも感じるはずです。

次にこの絵を見たとき、ベラスケスの「まなざし」が自分に向けられていることを少しだけ意識してみてください。

あなたはもう、ただの観客ではないことに気付くはずです。

配信元: イロハニアート

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