ギュスターヴ・クールベ《絶望》, Public domain, via Wikimedia Commons.
①争わずに解決!修正したフリで受け流したミケランジェロ
ダニエレ・ダ・ヴォルテッラ《ミケランジェロ・ブオナローティ》, Public domain, via Wikimedia Commons.
ルネサンスの三代巨匠に数えられるミケランジェロ。彫刻と絵画の2分野で天才と称えられ、特に筋骨隆々な男性像を得意としました。
そんなミケランジェロの代表作といえば、《ダヴィデ像》ではないでしょうか? 5メートルを超える巨大な大理石彫刻で、理想的な肉体美を表現した作品です。当初から傑作と評判でしたが、実はこの作品、完成時に依頼主から「ダメ出し」されたと伝わっています。
ミケランジェロ・ブオナローティ《ダヴィデ像》(Livioandronico2013 • CC BY-SA 4.0), Public domain, via Wikimedia Commons.
本作の依頼主は、フィレンツェの政治家ピエロ・ソデリーニ。彼は完成した《ダヴィデ像》を見上げ、大満足……と思いきや、「うーん、鼻が大きすぎるんじゃない?」と難癖をつけました。
ミケランジェロは、自身の仕事に絶対のプライドを持っていた芸術家です。自作にケチをつけられて黙っていられるはずがないのですが、このときはなぜか言い返さず足場にのぼり、ノミで像の鼻を削って修正。ソデリーニは「おー!良くなった!」とご満悦でした。
ミケランジェロ・ブオナローティ《ダヴィデ像》(部分)(Jörg Bittner Unna • CC BY 4.0), Public domain, via Wikimedia Commons.
ところが、これは修正した「フリ」でした。ミケランジェロは大理石の粉を隠し持っておき、ノミで彫刻を削るフリをしながら粉をパラパラと落としたのです。5メートルの巨像だったことや、足場で視界が限られていたことから、ソデリーニには実際に削ったように見えたのでしょう。
実際には手を入れてないのに、依頼主の要望どおり修正したように見せてその場を収める…。現代のクライアントワークにも応用できそうな(?)、鮮やかな手腕です。
②怒られても直さない!芸術を貫いたレンブラント
レンブラント・ファン・レイン《34歳の自画像》, Public domain, via Wikimedia Commons.
レンブラントが活躍した17世紀のオランダでは、絵画の注文主は教会や王族・貴族ではなく、お金を持った市民へと移り変わっていました。彼らは数人から数十人でお金を出し合い、高名な画家に自分たちの肖像画を依頼。こうして、大人数を1つのキャンバスに描く「集団肖像画」というジャンルが誕生しました。
レンブラント・ファン・レイン《夜警》, Public domain, via Wikimedia Commons.
レンブラントが描いた《夜警》は彼の代表作であると同時に、集団肖像画の傑作でもあります。しかし本作の完成後、「こんなんじゃお金払いたくないよ!」と言う人が出てきてしまいました。
《夜警》には描かれたのは、依頼者である火縄銃手組合の人々。大人数が登場していますが、手前の2人を主役にして光を当て、そのほかを後ろに描くことで、自然と手前の2人に目を引きつけられる見やすい構成になっています。まとまりがあり、かつドラマティックな画面になったのですが……これが、注文した人々にとっては納得いかない原因でした。
レンブラント・ファン・レイン《夜警》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
というのも、依頼者たちは「割り勘」でお金を支払うから。一般的に、集団肖像画は集合写真のように人が単調に並んだ様子を描くものとされていました。平等や公平が重視されたジャンルで、ドラマ性は求められていなかったのです。
《夜警》のように人によって扱いが異なると、脇役扱いの人は「同じ金額を払ったのに、あの人は主役で自分は脇役なんて酷い!」となるわけです。しかも依頼者は成人男性たちだったのに、少女や少年、犬まで描き込まれる始末。「タダで描いてもらっている人がいる、ズルい!」と不満を買うことになってしまいました。
レンブラント・ファン・レイン《夜警》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
レンブラントは「描き直せ!」「お金払わないぞ!」と非難を浴びますが、彼も自分に絶対の自信を持つ芸術家。集団肖像画によくある単調な構図で絵を描きたいとは思わなかったらしく、修正はしませんでした。
最終的には、絵の中での扱いが大きい人々が多めにお金を負担し、決着となったようです。
