●借金に追われた人は「相談に行く交通費さえ苦しい」
借金に追われる人にとって、法律事務所まで足を運ぶこと自体が大きな負担になる。
仕事や家事、育児の合間に相談時間を確保するだけでも大変だ。財布に小銭しかなく、交通費さえ捻出できない人もいる。遠方なら、なおさらだ。
筆者が取材した人たちの多くも「オンライン相談のほうが助かる」と話していた。
もともと「弁護士に相談するのは敷居が高い」と感じている人は多い。そこに対面面談の負担が重なれば、さらに相談から遠ざかってしまう可能性もある。
ちなみにアメリカでは、州ごとに違いはあるものの、弁護士に一律の対面面談義務はないとされる。米国法曹協会(ABA)の指針でも、対面義務は明示されていない。
ニューヨーク州の女性弁護士は、筆者の取材にこう語っていた。
「アメリカは国土が広く、遠方のクライアントと直接面談するのは現実的ではありません。コロナ禍以降、裁判手続きもオンライン化が進みました。私自身、クライアントに直接会うことはめったにありません。こちらでは面談の手段よりも“質”が重要視されます」
●時代に即した「相談の形」を考えるべきではないか
日本の司法も、今年5月21日からの民事訴訟法改正により、さまざまな裁判手続きのオンライン化が進む。
裁判資料のオンライン提出や、訴訟記録のオンライン閲覧もできるようになる。先行してウェブ会議による期日参加はすでに一般化した。
今後、日本の司法はデジタル化やAI支援を活用しながら、より迅速で効率的な方向へ進化していくだろう。それは多くの市民が期待していることでもある。
そうした流れがあるのなら、債務整理を必要とする人たちに対しても、オンライン面談をより柔軟に活用できる余地があってもいいのではないか。
もちろん、本人確認やセキュリティ確保など、慎重に検討すべき課題があることは理解している。
それでも、世の中には「リーガルマインド」や「法律知識」と無縁なまま生きている人が大勢いる。法律に詳しくなくても、人は普通に生活できるからだ。
法的トラブルに直面した人のうち、実際に弁護士などの専門家へ相談・依頼する人は2割程度にとどまる──。「2割司法」という言葉は、その現実を象徴している。
だからこそ、弁護士には、より市民に開かれた存在であってほしい。そして、市民側もまた「困ったときには頼れる制度がある」ということを知ってほしい。
借金で限界に追い詰められた人には、どうか怖がらずに、その扉を叩いてほしい。大げさに聞こえるかもしれない。だが、本当にそう思うのだ。
命さえあれば、人は何度でも立ち上がることができる。

