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「皆と同じものが食べられない」難病フェニルケトン尿症―新薬で自然な食事ができる可能性

「皆と同じものが食べられない」難病フェニルケトン尿症―新薬で自然な食事ができる可能性

かつては重度の知的障害をきたすことが多かった難病「フェニルケトン尿症(PKU)」は、1970年代に始まった新生児マススクリーニングによって、早期発見と食事療法による予後の改善が可能となりました。しかし、患者さんは生涯にわたり厳格なタンパク質制限と不快な味の治療用特殊ミルクを飲み続ける必要があり、「食」という人生の楽しみの一つを諦めなければなりません。2026年3月、新たな治療の選択肢として内服薬「セピアプテリン」が国内で発売されました。これに合わせて東京都内で開かれたメディアセミナー(PTCセラピューティクス主催)で、大阪公立大学大学院 発達小児医学の濱崎考史教授がこの病気の歴史、新薬が患者さんの生活をどのように変える可能性があるかなどについて講演しました。概要をご紹介します。


新生児マススクリーニングで「正常な発達」も可能に

フェニルケトン尿症(PKU)は、食べ物に含まれるタンパク質の成分「フェニルアラニン」というアミノ酸を、体内でうまく分解できない先天性の代謝異常疾患です。通常、フェニルアラニンは肝臓にある酵素によって別のアミノ酸「チロシン」に変換されますが、PKU患者さんはこの酵素の働きが生まれつき低下しているため、血液中のフェニルアラニン値が上昇してしまいます。医学部の教科書にも出ているため名前は有名な一方で、日本の患者数は1000人に満たない希少疾患であるため、実際の患者さんを診察したことがある医師はごく少数です。

血中のフェニルアラニン濃度が非常に高い状態のままでいると、脳の発達が妨げられ、重度の知的障害や運動発達の遅れ、けいれんなどの症状を引き起こします。かつては言葉の発達遅れなどを理由に、2歳頃に受診してやっと治療が開始されていました。

1977年に日本で「新生児マススクリーニング」が導入されたことで状況は一変しました。現在では生後数日の血液検査で診断が可能となり、症状が出る前から治療を開始することで、正常な発達が期待できるようになっています。

50年近く変わらなかった「過酷な食事制限」の現実

早期診断が可能になった一方で、治療の基本である「食事療法」の内容は1970年代から長らく変わっていませんでした。PKUの食事療法は、一般的な低タンパク食とは比較にならないほど厳格です。腎臓病などの食事療法ではタンパク質を2〜3割減らすのが一般的ですが、PKU患者さんは通常の食事の約5分の1程度にまで制限しなければなりません。肉や魚、卵などはもちろん、主食である米やパンにもタンパク質が含まれているため制限の対象となります。

普通の白米の代わりに「低タンパク米」などを使用します。これらは非常に高価で、医療費の補助対象にもなっていません。不足するアミノ酸を補うための治療用特殊ミルクは、アミノ酸特有の強い苦味や臭いがあり、「胃腸薬を水で溶かしたような味」と表現されるほどまずいものです。

このような制限を一生涯、自らの意志の力だけで守り続けるのは容易ではありません。特に思春期以降、友人との外食や社会生活の中で「自分だけ違うものを食べる」という状況は、社会的な孤立感や心理的負担を生んでいます。データによると、成人患者さんの約3分の2~4分の3が、管理目標値に到達できていないのが現状です。放置すれば、大人であっても脳の白質に病変が生じ、認知機能の低下や精神症状を招く恐れがあります。

配信元: Medical DOC

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