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血液疾患治療の進歩がもたらした“新たな課題”への挑戦―「HEMA-Bridge」プロジェクトが始動

血液疾患治療の進歩がもたらした“新たな課題”への挑戦―「HEMA-Bridge」プロジェクトが始動

近年、白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患の治療は長足の進化を遂げ、かつては「不治の病」とされた病気が、医学の進歩により長く付き合いながら生きていく「慢性疾患」へと変わりつつあります。しかし、進歩の裏で医療現場では「専門医への患者集中」という新たな課題が浮き彫りになっています。こうした課題を解決するため、日本血液学会、福島県および三重県の医師会、ノバルティス ファーマが協力し、医療連携プロジェクト「HEMA-Bridge(ヘマ・ブリッジ)」を始動させました。本稿では、血液疾患治療の歴史を振り返りながら、現場が抱える課題と、その解決に向けた本プロジェクトの概要、そして期待される未来像についてお伝えします。


血液疾患治療 進歩の歴史

日本血液学会理事長(京都大学医学部附属病院 病院長)の髙折晃史先生は、ここ20年間で血液疾患の治療が「非常に進歩した」と振り返ります。1980~90年代にかけては、白血病やリンパ腫、骨髄腫といった代表的な血液疾患の治療は、強力な抗がん剤を用いた化学療法に加え、白血病では骨髄移植などの同種移植、リンパ腫や骨髄腫では自家移植が主流でした。当時は有効な治療法が限られており、数年で命を落としてしまうケースも少なくありませんでした。

しかし、2000年代に入ると、がん細胞の特定の分子を狙い撃ちにする「分子標的薬」が登場します。これにより、例えば慢性骨髄性白血病は、飲み薬を服用するだけで通常の生活を送れるほどに予後が改善しました。さらに2010年代後半からは、患者さん自身の免疫細胞の遺伝子を改変してがん細胞を攻撃させる「CAR-T細胞療法」や、特殊な「二重特異性抗体」といった治療法が次々と実用化され、かつては厳しい状況だった病気でも、10年以上の長期生存も可能な時代を迎えています。

患者数の急増と専門医への一極集中という新たな課題

医療の進歩によって生存期間が大幅に延びたことに伴い「血液疾患の患者数が急激に増え続けている」という新たな現実が医療現場に重くのしかかっています。少子高齢化によって日本の総人口が減少局面に入る2040年に向けても、高齢者人口の増加を背景に、血液疾患の患者数はさらに増加すると予測されています。一方で、治療を担う日本血液学会血液専門医の数自体は増えてはいるものの、急増する患者数には追いついていないのが現状です。
血液疾患は病態が複雑で、診断や治療には高度な専門性が必要です。そのため、地域の内科医からは「専門外なので診るのが難しい」と懸念されがちです。また患者さん側も「ずっと専門医に診てほしい」と考えるため、治療が一段落して状態が安定していても、高度医療を担う基幹病院の専門医のもとに長期間とどまるという構造的な問題が起きています。
患者さんは定期的な経過観察のためだけに、片道数時間かかっても遠方の基幹病院まで通院し、長い待ち時間を費やし、仕事や日常生活に大きな制約が生じています。一方、受け入れる基幹病院側も過重労働となり、本来注力すべき新たな患者さんの高度な治療や、先進医療の開発、若手医師の教育などに十分な時間を割くことが難しくなっています。
加えて、地域によって専門医の数に大きなばらつきがある「医師偏在」も深刻です。CAR-T細胞療法や同種移植のような高度医療は限られた大病院でしか実施できず、専門医の少ない地域に住む患者さんは、これらの恩恵を十分に受けられないという「医療の地域格差」も顕在化しています。

配信元: Medical DOC

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