手フェチ心を熟知?美しい仕草を描いたドミニク・アングル
ドミニク・アングル《ドーソンヴィル伯爵夫人》, Public domain, via Wikimedia Commons.
アングルは19世紀フランスで活躍した新古典主義の画家です。新古典主義は感情表現が豊かなバロックやロココのあとに登場した潮流で、古代ギリシャ彫刻のような均整の取れた美に注目しました。
ドミニク・アングル《グランド・オダリスク》, Public domain, via Wikimedia Commons.
彼はラファエロなど古典を代表する画家に影響を受けながらも、保守的になりすぎずユニークな芸術を追求。有名な作例が《グランド・オダリスク》で、アングルはあえて背中を長く引き伸ばして描きました。
ドミニク・アングル《グランド・オダリスク》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
本作は手の表現も見どころです。女性の右手は「狐」を少し崩した形で、中指と薬指が揃っています。人差し指と小指に力が入って浮き、わずかに隙間が空いているのが手フェチ心に刺さります…!
狐の形は手が美しく見える所作とされ、現代でも女優やモデルのポーズによく見られます。アングルもこのポーズの魅力を熟知していたのかもしれません。
本人も手フェチでは?写実を極めた画家ウィリアム・アドルフ・ブグロー
ウィリアム・アドルフ・ブグロー《ヴィーナスの誕生》, Public domain, via Wikimedia Commons.
ブグローは19世紀フランスのアカデミスムを代表する画家。アングルなどから影響を受けており、国立美術学校で教鞭を執るほどの実力派です。
もはや写真に勝るほどのリアリティを極めたブグローは、手を描くのももちろん上手でした。彼自身も手フェチだったのでは? と思ってしまうくらい、手の描写へのこだわりも強く感じます。
ウィリアム・アドルフ・ブグロー《The Spinner》, Public domain, via Wikimedia Commons.
たとえば、《The Spinner》を見てみましょう。直訳すると「紡績する人」というタイトルで、女性が糸巻きを抱えています。
ウィリアム・アドルフ・ブグロー《The Spinner》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
糸をつまむ右手のポーズ……言葉を失う素晴らしさでは? 人差し指と親指で糸をつまむだけでなく、中指、薬指、小指それぞれにも絶妙な力が入り、細く長い指が綺麗に見えるポーズで描写されています。
ウィリアム・アドルフ・ブグロー《The Spinner》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
左手のポーズも秀逸です。女性は棒を握るのではなく、力の抜けた手に引っかけているだけ。中指の先を棒で隠したり、甲に血管がそっと浮き出ていたりと、フェチのくすぐりポイントを余すところなく押さえています。
ウィリアム・アドルフ・ブグロー《Laurel Branch》, Public domain, via Wikimedia Commons.
ブグローの絵画は、落ち着いた顔で無表情寄りの作品が多いのですが、そのぶん手に感情が表れています。手が好きな方にはぜひ押さえていただきたい画家です!
