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猫とはたらくvol.05:猫は、帰るべきところへ私を繋ぐ「錨」。作家・井上奈奈さんが語る、猫との暮らし

猫とはたらくvol.05:猫は、帰るべきところへ私を繋ぐ「錨」。作家・井上奈奈さんが語る、猫との暮らし

読者諸賢の皆々様、ご無沙汰しております。猫ジャーナルでございます。久々の更新となりましたがみなさんお変わりないでしょうか。生成AI動画との格闘に見切りを付け、取材記事中心にしようと一方的に舵を切った次第でありまして、更新頻度は下がりますものの、引き続き猫と猫を愛する人のために、猫とともにはたらく人々のエピソードを届けて参る所存です。 過去の人脈を存分に利活用した復帰戦第一幕は、 『ウラオモテヤマネコ』『猫のミーラ』『せかいねこのひ』、そして祖父江慎氏がブックデザインを手がけた『猫の悪口』など、猫をテーマにした独自の世界観を持つ作品を発表し続けている、作家・井上奈奈さんに共に暮らす猫のお話をうかがいました。 人生で何回もの引っ越しを重ね、年に何度も海外を旅をしてきた井上さんは「ずっと旅をしながら生きてきた」と語ります。その井上さんが、「家に帰りたい」と思うようになったきっかけは、一匹の猫でした。「猫」と「錨」は似ている——そう語る井上さんに、白色に包まれた彼女のアトリエで猫との暮らし、猫と創作について話をうかがいました。

はじまりは「ぞう」の絵本から

アトリエの壁に美しく飾られた、著作と資料。 −−初めてお会いしたときは、デザイナーの井上さんでしたね。 井上:初めてお会いしたはときは、デザイナーとして仕事をしながら、画家としても活動をしていました。それから少したって、絵本を出すきっかけがあり、今は作家として本を作ることを生業にしています。 −−最初の絵本『さいごのぞう』を描かれたきっかけを教えてください。 井上:その頃、私はトラとゾウを中心に絶滅危惧種の動物を保護活動を行うNPO「JTEFトラ・ゾウ保護基金」で、デザインやアートの領域でお手伝いをしていました。 NPOの方から、「『保護しましょう』と声高に訴えるのではなく、心の奥深いところに私たちの訴えを届けるには、どうしたらいいんだろう」と相談を受けて、「絵本はどうですか?」って提案したんです。それが『さいごのぞう』(2014年)です。 絵本のラフ本をNPOの理事長さんたちに見せたら「すぐに作りたい」という話になり、知り合いの出版社さんへ話を通して、絵本作りが始まりました。 −−その次が『ウラオモテヤマネコ』でしたね。これが最初の猫の絵本。ちなみに猫と井上さんとの関わりは? 井上:私が初めて猫と一緒に暮らしたのはアメリカでした。学生時代のホームステイ先に、毛足の長い猫が2匹いて、その他にもヤギとかブタとか。動物がいっぱいいたんです。そのときは、そこまで愛情が沸くこともなかったですけどね。初めて、自分の猫として受け入れたのが「カノン」と名付けた猫でした。その子はちょうど『ウラオモテヤマネコ』を作っているときに迎えました。 −−この本を作ることになったきっかけは? 井上:『さいごのぞう』を一緒に作ったNPO「JTEFトラ・ゾウ保護基金」がイリオモテヤマネコの保護も始められて、そのとき、イリオモテヤマネコが発見されてちょうど50周年だったんですね。それで、次はイリオモテヤマネコの絵本を作ろうという話になりました。 私、子供の頃から、動物文学者で児童文学者の戸川幸夫さん(1912年~2004年。戸川氏の入手した標本がイリオモテヤマネコ発見の契機となる)の本を読んで育ったから、イリオモテヤマネコにすごく興味があったんです。『ウラオモテヤマネコ』を描いている途中で、NPOの理事長が戸川幸夫さんの娘さんだと知って、これはもう運命だと感じました。

カノンとの出会いと別れ、キリグとの暮らし

井上さんが初めて迎えた猫・カノン。 −−カノンとは出会ったのは、どんなきっかけだったんですか? 井上:建築家の友人が、静岡のパン屋さんで保護している猫の里親募集をリツイートしていて、その姿に一目惚れしてしまいました。そのとき、猫を飼うために引っ越したばかりだったんです。「どうやって迎えようか」って考えてるときにそのツイートが流れてきたから、もうこれは渡りに船というか、運命だと思って静岡へ会いに行きました。 黒猫だと聞いていたんだけど、実際会ってみると、グレーと茶色の間みたいなすごい変わった色。すぐメロメロになりました。やんちゃでかわいくて。 猫と一緒に住むようになって、自分自身がすごく変わりました。これまで何回も引っ越しを重ね、転々としながら、ずっと旅をしているような感覚で生きてきました。旅は今でも好きですけど、旅行に行っても猫のことばかり気になっちゃって。お留守番させるのがかわいそうというよりも、猫に会えない状況に私が耐えられなくなっちゃって。自分が変化したなと感じます。 猫と暮らし始めてから「自分の家に帰ってくる」という感覚が強くなりました。 −−分かります。見返りを求めない愛情というか……。 井上:純粋無垢な愛情を持ったのはカノンが初めてかもしれない。人間に対して抱いたことのないものですね。好きな人とか、友人とかに対しても愛情を持って接している気持ちはあるけれど、それとはちょっと毛色が違いますよね。だけれど、カノンは生後半年くらいのときに迎えて、7歳で急に亡くなってしまったんです。 −−その後、カノンと同じ、胸にダイヤの柄がある猫を迎えたのが2019年。 アトリエで寝転ぶキリグ 井上:その子を「キリグ」と名付けました。このアトリエに初めてキリを連れてきた日のことは、いまだによく覚えてます。リフォーム工事の途中で、家具もほとんどなかったし、キリグもめちゃくちゃ不安だったのでしょう。
配信元: 猫ジャーナル

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