6月11日(日本時間12日)に開幕するサッカー・ワールドカップ(W杯)を前に、前代未聞のSNS現象が起きている。ニュージーランド代表DFティム・ペイン(32)=ウェリントン・フェニックス=のインスタグラムフォロワー数が、わずか数日前までの5000人未満から、日本時間6月1日時点でなんと「385万人」へと大激増したのだ。一躍、世界で最も注目される選手のひとりとなった“シンデレラボーイ”誕生の裏には、アルゼンチンのインフルエンサーが仕掛けた壮大なプロジェクトがあった。
「W杯で最も無名な選手を応援しよう」
数日前まで、ペインは母国ニュージーランド以外ではほとんど知られていないサッカー選手だった。過去にイングランドのブラックバーンや米MLSポートランド・ティンバーズの若手チームに所属した時期はあったものの、現在はオーストラリア・Aリーグのウェリントン・フェニックスでプレーする32歳のユーティリティープレーヤーだ。W杯代表メンバーに選出されたとはいえ、世界的な知名度は皆無に等しかった。
しかし、アルゼンチンのサッカー系インフルエンサーであるバレン・スカルシーニ氏(通称スカルソ)のひらめきが、彼の運命を変えた。
スカルソ氏は「国籍に関係なく、私たち全員が団結して応援できる選手を見つけよう」と、今大会における“最も無名な選手”を探す企画をスタート。インスタグラムのフォロワー数や代表チームでの練習写真への「いいね!」の少なさから、ペインを“最大のアンダードッグ(大穴)”に認定した。
配置されたTikTokやYouTubeなど計160万人のフォロワーに向け、「ペインの投稿に『いいね!』とコメントを浴びせろ!」「W杯が始まるまでに彼を有名にして、熱狂的なファンベースを作ろう」と呼びかけたのだ。
「GOAT(史上最高)」の絵文字が殺到!愛ある大喜利状態に
これまではウェリントン・フェニックスでの好プレーや友人とのゴルフ、ニュージーランド代表としての活動記録など、たまにしか投稿されない目立たないアカウントだったが、事態は一変。彼のアカウントには、数千件にも及ぶスペイン語の熱狂的な応援メッセージとともに、「炎」の絵文字や「ヤギ(🐐)」の絵文字が次々と殺到し始めたのだ。
スポーツファンの間で使われるこのヤギの絵文字は、英語の「GOAT(Greatest Of All Time=史上最高の意)」という言葉の頭文字と、動物のヤギ(Goat)を掛け合わせたネットスラングだ。通常はリオネル・メッシやマイケル・ジョーダン、大谷翔平のような「歴史的レジェンド」を称える際に使われる最大級の賛辞だが、それが無名のニュージーランド人DFのコメント欄を埋め尽くしたのである。
寄せられたコメントのほとんどは好意的で、ユーモアとジョークに溢れたものだった。あるユーザーが「1. ティム・ペイン、2. クリスティアーノ・ロナウド、3. リオネル・メッシ」とコメントすると、それに同調した他のユーザーから1万件近くの「いいね!」が集まるなど、ネット上は愛のある“大喜利状態”と化した。
さらに「No Pain, No Gain(痛みなくして得るものなし)」をもじった「No Payne, No Gain(ペインなくして得るものなし)」というキャッチフレーズが大流行。AIで生成されたと思われるスペイン語の応援歌まで作られ、「今年のW杯はラミン・ヤマルのものではなく、ペインのものになる」「彼はアルゼンチンの伝説、アンヘル・ディ・マリアの精神的後継者だ」と高らかに歌われるお祭り騒ぎとなっている。

