●危険が予見される場合には現場からの離脱も
──今回のような事件をどう防いでいけばよいでしょうか。
労働施策総合推進法の改正により、カスハラ対策が事業主の義務となります。しかし、今回の事件が示すように、マニュアルや契約書の整備だけでは防ぎきれない厳しい現実もあります。
また、いつ同様の痛ましい事件が起きるかわかりません。
もちろん、サービス利用者に対する最低限の礼儀や配慮は必要です。しかし、違法・不当なクレームにまで応じる必要はなく、ときには毅然と対応し、自らの身を守る行動も求められます。
危険やリスクが予見される場合には、ためらわず複数人で訪問する、現場から離脱する、ICレコーダーや防犯機器を活用するといった実効性のある対策を講じる必要があります。
また、そのような防衛策の構築を国や自治体、関係機関が実質的に支援していく体制づくりも重要だと考えます。
●問題を現場任せにしてはいけない
──事業者が気をつけるべきことは。
職員の安全を守る仕組みを整えていない事業者は、問題が起きた際に安全配慮義務違反などの法的責任を問われる可能性があります。
カスハラや暴力のリスクがある利用者や家族への対応を、現場の職員に任せきりにしてはいけません。
組織として、危険が予見される場面では、警察と連携する体制を整えることや、必要に応じて弁護士が窓口となって対応する仕組みを事前に構築しておくことも極めて重要です。
【取材協力弁護士】
周 将煥(しゅう・しょうかん)弁護士
2017年早稲田大学大学院法務研究科修了、2020年弁護士登録。東京弁護士会。 株式会社、医療法人、社会福祉法人及びNPO法人等の各種法人を中心に、不動産に関する紛争、主に使用者側の労働事件対応(ハラスメント対応等含む)、M&A、法人破産等、経営の基盤を支える企業(法人)法務を中心に手がける。地方公共団体のハラスメント対応窓口や各種セミナー講師を担当するほか、相続事件(法人の事業承継に伴う親族間の家事紛争含む)解決等にも実績を持つ。
事務所名:アルファパートナーズ法律事務所
事務所URL:http://www.alpha-lo.jp/index.html

